ローザンヌ大学への出張 Travel to the University of Lausanne 

 2024年2月28日から3月3日までの予定で、ローザンヌ大学のワルラス=パレート研究所に滞在しています。今回の出張の目的は、自著Léon Walras’s Economic Thought: The General Equilibrium Theory in Historical Perspectiveについての講演、ワルラス文庫の調査、共同研究の打ち合わせです。

 私の講演には、研究所の若いスタッフや院生の皆さんがたくさん参加してくれて、活発な議論ができました。さらには名誉教授であるPascal Bridel教授も参加してくださり、大変光栄でした。この本は、Bridel教授の著書から大きな影響を受けて、執筆したからです。当日私の討論者を務めてくれたのは、長年の研究仲間であるRoberto Baranzini教授と、新進気鋭の研究者Luca Timponelli氏でした。私の著書を非常に丁寧に読んでいただき、その意義だけでなく問題点まで的確に指摘していただきました。やはりここは世界最高レベルのワルラス研究が行われている所だと改めて思いました。

ローザンヌ大学の現在のキャンパスは、郊外にあり豊かな自然と美しいレマン湖の風景に包まれていますが、旧市街にある元ローザンヌ・アカデミーの校舎にも行ってみました。ワルラスやパレートが教鞭をとった建物で、ワルラスをローザンヌ学派の創立者として讃えるブロンズのメダル(1909)が飾られています。実はここは現在、中学校の校舎になっているので、メダルは平日しか見ることができません。しかも特に案内版があるわけでもなく、場所はわかりにくいです。

この近くにあるリュミーヌ宮で、1909年にワルラス経済学者生活50周年記念祭が開催されました。シュンペーターも招かれて、二人は初めて会いましたが、シュンペーターがあまりに若いのでワルラスは「あなたのお父さんの本を読みましたよ」と言ったそうです。リュミーヌ宮は現在、州の博物館の建物が入っていて、一般の観光客も内部を見ることができます。

今回のローザンヌ訪問は、パンデミックが収束してから初めての訪問で、実に4年半ぶりです。研究活動が正常化したことを、とても嬉しく思います。

本日刊行 Léon Walras’s Economic Thought

私の著書Léon Walras’s Economic Thought: The General Equilibrium Theory in Historical Perspective(『レオン・ワルラスの経済思想 歴史的観点からの一般均衡理論』が、本日、Routledge社(London&New York)から刊行されました。出版社のページはこちらです。Amazonからも注文できます。私の研究室にも現物が届きました。多くの方に読んでいただけることを願っています。

My book, Léon Walras’s Economic Thought: The General Equilibrium Theory in Historical Perspective, was published today by Routledge (London & New York). You can find the publisher’s page here. It is also available for ordering on Amazon. The copies of the book arrived in my office. I hope that many people will read it.

(追記)2023年12月7日 滋賀大学のHPで紹介されました。「経済学部 御崎加代子教授の研究成果をまとめた書籍がイギリスの大手出版社Routledgeから公刊」

間もなく刊行 Léon Walras’s Economic Thought : The General Equilibrium Theory in Historical Perspective (Routledge)

私の著書 Léon Walras’s Economic Thought :The General Equilibrium Theory in Historical Perspective(レオン・ワルラスの経済思想: 歴史的視点からの一般均衡理論)が、Routldgeより12月5日に刊行されることが決まりました。詳しくはこちらをご覧ください。Amazonでも予約が開始されました

 本書は、私のこれまでのワルラス研究の集大成です。1998年に出版した日本語の著書『ワルラスの経済思想』(名古屋大学出版会)とタイトルは似ていますが、内容は全く異なっており、主に2016年以降に発表した論文が元になっています。経済学史にとどまらず、社会科学の様々な分野の研究者や学生さんたちに読んでいただけることを希望しています。

My book, Léon Walras’s Economic Thought: The General Equilibrium Theory in Historical Perspective, will be published by Routledge on December 5th. You can find more information here. Pre-orders are also available on Amazon.

This book is the culmination of my research on Walras. Although the title is similar to my previous book in Japanese, “ワルラスの経済思想” (Nagoya University Press, 1998), the content is completely different and is mainly based on the papers I have published since 2016. I hope it can be read by researchers and students in various fields of social sciences, not just the history of economics.

ワルラス『社会経済学研究』日本語訳の刊行

御崎加代子・山下博訳『ワルラス社会経済学研究』が2023年2月5日に、日本経済評論社より刊行されます。出版社による紹介ページはこちらです。

ワルラスの大著『社会経済学研究』(初版1896年・2版1936年)は、重要な著作であるにもかかわらず、長い間翻訳がなされませんでした。2010年にワルラス没後100年を記念してやっと英訳が出版されました。今回の翻訳は初めての日本語訳です。これほど長い間翻訳がなされなかったのは、パレートやシュンペーターなど後継の経済学者たちから否定的な評価を受けたことも原因ですが、テキストの難解さが決定的な理由として考えられます。この日本語訳も、完成に10年かかりました。

 一般均衡理論の創設者ワルラスがどのように生涯、社会正義の実現に取り組んだのか、ワルラスの情熱を生々しく伝える著作です。この著作の中でワルラスは、公正と効率の両立とその実現という極めて現代的なテーマに挑んでいます。たしかに難しい内容ですが、できるだけわかりやすい訳を心掛けました。ぜひ多くの皆さんに手に取っていただきたいと考えています。

 

(追記)

1.この本の出版については、滋賀大学経済学部のHPでも紹介されました。記事はこちらです。

2.わかりやすい解説を寄稿しました。「ワルラス『社会経済学研究』の不思議な魅力」『評論』No.227 (2023年5月号) , 4-5.

3. 2023年6月4日、NIKKEI Financialのコラム「知の旅、美の道〜Journey to Liberal Arts」で、この本を紹介していただきました。「偉大な経済理論家、ワルラス 条件の平等を重視」根井雅弘(京都大学教授)