ASSA 2019 Atlanta ワルラス・セッションで討論者をつとめる

2019年最初の研究活動です。1月4日から6日まで、アメリカ経済学会(American Economic Association) の年次大会 ASSA 2019 アトランタ大会に参加しました。ワルラスに関するセッションで、Discussantを務めるためです。(大会ホームページはこちら

毎年新年に開かれるこの大会は、59の学会・団体が共同で実施し、全米のみならず世界中から多くの経済学者たちが参加する、とてつもない規模の会合です。今回は、アトランタ中心部の連結した3つのホテルが会場となりましたが、会場内を移動するだけで、毎日歩数が1万歩を超えてびっくりしました(笑)。

私が参加したセッションのタイトルは、”Pure Mind, Applied Vision, and Social Conscience: Revisiting the Economics of Léon Walras”です。(プログラムはこちら)セッションの報告者のうち、Guy Numa氏は新進気鋭の若手研究者ですが、それ以外の3人、 Franco Donzelli教授、 Alan Kirman教授、 Roger Guesnerie 教授は、それぞれこの分野の大御所ともいうべき人物で(Guesnerie 教授は、日本でもおなじみのトマ・ピケティ氏の指導教授としても有名です)いわばスターが一同に会する夢のようなセッションでした。ここに討論者として参加できたことは、大変名誉なことだと思っています。

(セッションの様子は、友人のRebecca Gomez Betancourt リヨン第2大学教授が撮影してくれました。彼女のTwitterにも同じ写真が投稿されています)

私は、このセッションの第2報告、 Franco Donzelli教授 の”Walras’s Theories of Exchange and Production Equilibrium in the 1870s and Beyond”という論文の討論者をつとめました。ワルラスの一般均衡理論の形成過程に新しい光を当てたとても面白い論文ですが、分量が69頁もあり内容も難解だったため、コメントを用意するのに時間がかかり、年末年始、全く休むことができませんでした(涙)。 しかしこのコメントは、苦労して用意した甲斐があり、 Donzelli教授を含め、参加者たちからは好評でした。実はこの論文は内容が難しすぎて、短い報告時間で聴衆に理解してもらうのはほとんど不可能だったため、私の解説コメントがみんなの役に立ったようなのでした。

アトランタ滞在中は、CNNセンターに隣接したホテルに泊まりました。18階の客室からオリンピック記念公園が一望できました。アトランタに滞在するのは実は今回が2回目ですが、日本から直接行ったのは初めてです。大阪からアトランタまで、乗り継ぎ時間を含めると片道20時間以上かかる長旅で、とても疲れました。日本に帰ってきて、ほっとしています。

Œconomia掲載 ワルラスの労働市場観に関する論文

2018年最後の研究業績の公刊です。「ワルラスの純粋・社会・応用経済学の労働市場観」という論文が、フランスの査読ジャーナル Œconomia誌の12月号に掲載されました。

Kayoko Misaki, « The Concept of Labor Market in Léon Walras’ Pure, Social, and Applied Economics », Œconomia, 8-4 | 2018, 419-438.

(電子ジャーナルはこちらです。論文の本文はこちらをクリックしてください)

ワルラスは労働組合の賃上げ闘争や最低賃金制度の導入などに生涯反対し、市場原理による賃金決定を擁護し続けました。このことから、ワルラスの労働市場観は新古典派的と考えるのがこれまでの常識でしたが、この論文はそのような解釈を覆すことを意図しています。ワルラスのプルードンやマルクスに対する批判もヒントに、教科書的な解釈では触れらないワルラスの真の意図を明らかにしました。

この論文は、2016年9月に参加した、ローザンヌ大学/ILOの賃金問題ワークショップでの発表が元になっています(記事はこちら)。ワークショップの後、このジャーナルから誘いを受けて、投稿したのですが、二人のレフェリーから非常に厳しい査読意見がつきました。書き直しに予想以上に苦労させられ、まるで院生時代に戻ったような気分でした(笑)。しかし結果として、内容が格段に良くなり、レフェリーにはとても感謝しています。

CFP 国際ワルラス学会 AIW 2019 Lausanne

国際ワルラス学会 The International Walras Association の第10回目の大会が2019年の9月にローザンヌ大学で開催されることになり、このたび Call for Papers (論文募集案内)が発表されました(ウエッブ・サイトはこちらです)。私は、その大会の Scientific Committee (プログラム委員会)の一員を務めることになりました。

大会のテーマは ”Walras- Neoclassical?” 「ワルラスは新古典派か?」です。経済学の教科書でおなじみの、限界革命のトリオとしてのワルラス、新古典派の元祖としてのワルラスという解釈を、今一度問い直すという、大変刺激的なテーマになっています。今回は、ワルラス以外の新古典派経済学者のみを取り上げてもよいことになっており、ワルラス研究の枠を超えて様々な研究者たちと交流できることが楽しみです。ちなみに私は日本で最初にワルラスの翻訳を公刊した経済学者、早川三代治について報告する予定です。

国際ワルラス学会 AIWは1997年に結成され、これまで大体2年ごとに大会を開催してきました。今回は前回のパリ大会から4年ぶりで、しかも記念すべき第10回大会ということもあって、関係者の気合いの入り方がいつもと違います(笑)。これまでに会長を務めた者は私も含めて全員、今回のプログラム委員会に参加していますが、これは大変意義のあることだと考えています。日本からも多くの方がAIW2019ローザンヌ大会に参加されることを希望しています。

資料紹介 Guizot’s letter (1833)

滋賀大学附属図書館が所蔵するフランソワ・ギゾーの書簡(1833年8月13日付)の紹介論文がこのたび公刊されました。

(資料紹介)御崎 加代子「滋賀大学図書館所蔵 François Guizot の自筆書簡(1833)について」『滋賀大学経済学部研究年報』25. 2018, pp.123-126.(電子ジャーナルはこちらです

この書簡を現在、図書館の貴重書コーナーに展示していることについては、すでにこのサイトでもお知らせしました。(記事はこちらです

本資料をみつけたのは全くの偶然でした。最初は誰が書いた手紙なのかもわかりませんでしたが、一目見た途端、美しく力強い筆跡に、心を奪われてしまいました。これまでいろいろな経済学者たちの筆跡に触れる機会がありましたが、歴史に名を遺した偉大な人物の筆跡にはやはり、ただならぬ雰囲気が漂っています。

紹介論文には、書簡の画像も掲載しました。この気品に満ちた迫力ある筆跡をぜひご鑑賞ください。

推薦図書 城一夫『フランスの配色』(2011)

私の研究テーマとは直接関係しませんが、滋賀大学附属図書館の「私の推薦するこの一冊」コーナーに、城一夫『フランスの配色』パイインターナショナル(2011)を推薦しました。推薦文はこちらです。フランスの洗練された美を味わってみたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

新講義 History of Economic Ideas and Globalization

2018年10月より、滋賀大学経済学部で新科目 History of Economic Ideas and Globalizationを開講することになりました。英語による少人数講義です。現代のグローバル経済を理解するうえで重要な鍵となる経済学の概念がどのような歴史的背景のもと誕生したのか考察します。留学生の履修を想定して、日本の近代化の歴史についても触れます。以下が講義の計画です。

1.Introduction 序論
2.Invisible Hand 1 見えざる手1
3.Invisible Hand 2 見えざる手2
4.Laissez-Faire and Free Trade レッセ・フェールと自由貿易
5.Poverty 貧困
6.Industry インダストリィ
7.Comparative Advantage 比較優位
8.Utilitarianism 功利主義
9.Perfect Competition 完全競争
10.Entrepreneurship 企業者
11.Risk and Uncertainty リスクと不確実性
12.Economic Ideas and Japanese Modernization 日本の近代化と経済思想
13.Presentation レポート発表
14.Presentation レポート発表
15.Free discussion 自由討論

すでに経済学部では、日本語による専門科目「経済学史」「現代経済学史Ⅰ」「現代経済学史Ⅱ」を開講していますが、これら3科目が学者別、学派別にそれぞれの学説の意義を取り上げるのに対して、この英語講義は、概念別にその歴史的背景をとりあげ、歴史の予備知識があまりなくても容易に理解できるように配慮しています。ちなみにこの講義では、以下のような経済学者たちが登場します。

貴重書展示 ギゾーの書簡(1833)

 滋賀大学附属図書館の貴重書コーナーの展示替えを行いました。2018年秋の展示は、フランソワ・ギゾーの自筆書簡(1833)です。(展示の様子はこちら

 

 

以下、私の解説文の抜粋です。

ギゾー(François Pierre Guillaume Guizot,1787-1874)は、19世紀前半に活躍したフランスの歴史家、政治家である。今回展示するのは、本学図書館が所蔵する、1833年8月13日付のギゾーの自筆書簡である。この書簡は、2018年2月に購入した古書、ギゾーの代表作『ヨーロッパ文明史:ローマ帝国の崩壊からフランス革命まで』の英訳版(1839)に偶然貼り付けられていた。ギゾーはフランスの七月王政期、1832年から1837年まで公共教育大臣として、数々の教育改革に携わった。この書簡が書かれた約二か月前、1833年6月23日には、有名な初等教育法案「ギゾー法」が成立している。この書簡にも公共教育省の便せんが使われ、肩書も「公共教育大臣」となっている。書簡の相手は、当時ヘブライ語学の第一人者であったエティエンヌ・カトルメール(Etienne Quatremère)で、その内容は、ヘブライ語の文法教育をめぐるものであり、極めて礼儀正しい文体で書かれている。

なおこの書簡の内容と日本語訳は、『滋賀大学経済学部研究年報』第25巻(2018年11月末刊行予定)に「資料紹介」として掲載される予定です。公刊されたら、このサイトでもお知らせします。
今回は、この書簡が書かれた1830年代に出版された、ノディエ著『歴史的パリ』(Paris historique : promenade dans les rues de Paris, par Charles Nodier, Auguste Regnier et Champin ; avec ; avec un rèsumè de l’histoire de Paris, par P.Christian[pseud.]
Paris:F.G.Levrault, 1838-1839)も同時に展示しています。パリの歴史を美しい挿絵入りで解説した本で、当時の街の雰囲気が味わえます。

貴重書展示コーナーの次回の展示替えは、2019年3月を予定しています。