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 The European Journal of the History of Economic Thoughtの2021年6月号 Volume 28, Issue 3がこのたび公刊されました。ワルラスとスミス『国富論』の関係を論じた私の論文がこの号に掲載されています。

Kayoko MISAKI “Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith?,” The European Journal of the History of Economic Thought 28-3, 2021, 404 – 418 (published on line, October 2020): https://doi.org/10.1080/09672567.2020.1837198.

この論文はすでに昨年の10月にオンライン上で公刊されており、このサイトでも論文の内容とともにお知らせしました(記事はこちら)。現在、この論文は、このジャーナルの Most read articles (最も読まれている論文)の10番目にランクインしています。経済学史のトップジャーナルのひとつに論文が掲載されたこともうれしいですが、経済学史の分野を超えて多くの皆さんに論文が読まれていることも大変うれしいです。今後はこの論文が末永く、多くの研究者に引用されることを願っています。

貴重書展示 トマス・モア『ユートピア』

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。

2021年春の展示は、トマス・モア『ユートピア』(仏語版 1715)です。この著作のタイトルは、新入生の皆さんにもおなじみでしょう。美しい挿絵のコピーも一緒に展示していますので、ぜひ楽しんでください。

展示の様子はこちらです。

私の解説文の抜粋は以下の通りです。

トマス・モア(Thomas More, 1478-1535)は、法律家の子としてロンドンに生まれ、オクスフォード大学で学んだ。オランダのエラスムスから影響を受け、人文主義者の一人として才能を発揮すると同時に、政治家としても活躍した。当時の国王ヘンリ8世の信任を得て、1529年には、大法官の地位にまで上り詰めた。しかしながら、モアは、カトリックの立場から、国王の離婚を認めなかったため、ロンドン塔に投獄され、1535年、反逆罪で処刑された。モアは、1516年に『ユートピア』というタイトルの著作を、ラテン語で出版した。モアは、この著作において、当時のイギリスの「囲い込み」政策がもたらした、社会の悲惨な状況を批判すると同時に、理想的な社会である「ユートピア」(「どこにもない場所」という意味)を描写した。「ユートピア」という言葉は、やがて「理想郷」の代名詞となり、モアの著作は、ユートピア思想の源流として、現代にいたるまで大きな影響力を及ぼしている。1715年に出版された、仏語版『ユートピア』のタイトルは「英国の大法官、トマス・モアのユートピア:人々の不幸を癒し、人々に完全な幸福をもたらすための斬新なアイデア」となっている。仏語版には、物語の内容を伝える、美しい挿絵が掲載されている。 ユートピア島では、当時の社会とは違い、犯罪者は処刑せず、奴隷にして労働に従事させることになっていた。一般的な人々の労働時間は一日6時間で、学問や文化的活動、娯楽にあてる時間があった。大きく快適な病院が建設され、病気になっても安心して治療を受けることができた。病人以外の人々も、昼食と夕食は会館で配給され、共同で食事をしていた。その他、男女の労働の違い、結婚と離婚についてのしきたり、宗教や死生観など、理想社会における人々の生活が詳細に叙述されている。

次回の展示替えは、10月を予定しています。

Impact誌での研究プロジェクト紹介

 私のワルラス研究プロジェクトが、イギリスのImpact誌で紹介されました。

Kayoko, MISAKI. “Elucidating the intellectual origin of Walras’s General Equilibrium Theory”. Impact, Volume 2021, Number 2, February 2021, pp. 80-81.

学生時代にワルラスに興味を持ったきっかけから、ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査への取り組み、現在進行中のワルラスと企業者、リスク、不確実性の研究テーマに至るまで、インタビュー形式で説明しています。

「はるかなる手紙展」第3期ギゾーの書簡 展示始まりました

 滋賀大学彦根キャンパスで開催中の「はるかなる手紙展」は、2021年2月1 日より第3期「フランソワ・ギゾー」が始まりました。ギゾーが公教育大臣として執筆した、1833年の書簡を公開しています。コロナ禍の中、お越しになることが難しい方は、ウエッブでパンフレットを公開していますので、そちらをご覧ください。

本展示は昨年の1月から始まっていますが、コロナのために、ギャラリートークは3月を最後に中止になりました。以下の写真は、昨年1月から3月のギャラリートークの様子です。 

 早くコロナが収まって、またギャラリートークが再開できるようになることを祈っています。

EJHET 掲載論文 ワルラスは『国富論』をどう読んだのか?

 The European Journal of the History of Economic Thought 誌にアクセプトされた、ワルラスとアダム・スミスとの関係を探った私の論文が、紙媒体に先駆けて、2020年10月27日付でオンラインで公刊されました。この論文は、オープンアクセスなので、以下のリンクから、全文の参照およびダウンロードが可能です。

Kayoko Misaki, “Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith?,” The European Journal of the History of Economic Thought (Published on line, October 2020): 1–15, https://doi.org/10.1080/09672567.2020.1837198.

この論文は、ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査を手掛かりに、ワルラスとアダム・スミスとの知られざる影響関係を明らかにする考察です。ワルラスの一般均衡理論は、スミスの「見えざる手」を理論的に発展させたものというのが、経済学の教科書に書かれている、一般的な解釈ですが、そのような「常識」に真っ向から挑んだのが、この論文です。この解釈については実は、アダム・スミス研究者による多くの反論がありますが、ワルラス研究者からはこれまでまったく反論がなされていなかったのです。また逆にワルラスはスミスから影響を受けていないという、シュンペーターやジャッフェの解釈を覆すことも、この論文は意図しています。ジャーナルの査読の過程で、当初は想定していなかった、ワルラスとスミス『道徳感情論』との関係にまで考察を拡げることになり、論文の内容が大きく発展しました。アドバイスしてくれたレフェリーに感謝しています。

この論文が、オープンアクセスにより、経済学史研究の枠を超えて、様々な分野の経済学者に読まれ、実りある議論につながってゆくことを期待しています。

「はるかなる手紙」展 再開のお知らせ

コロナウィルス感染予防のために、2020年4月末から中断していた「はるかなる手紙ー滋賀大学所蔵フランスの貴重自筆書簡」展(御崎加代子監修)が再開することになりました。(ウエッブサイトはこちらです)第2期の展示は、経済学者レオン・セー(Léon Say, 1826 -1896)の1883年付の書簡と関連資料です。10月1日から来年の1月29日まで、展示します。当分の間、ギャラリートークは行いませんが、興味のある方は是非ご覧になってください。

 レオン・セーはフランスの財務大臣を3度つとめ、日本銀行の設立にも大きな影響力を及ぼした人物です。セーが活躍したのは、エッフェル塔など、現在の花の都パリの街並みが出来上がってゆく時代で、印象派の画家たちが活躍した時代でもあります。パリのオペラ座は、このころ流行した「ナポレオン3世様式」と呼ばれる典型的な建築例だとされていますが、今回は、私が以前、リヨンのアンティークショップで購入した「ナポレオン3世様式」のアンティーク銀食器も展示します! 

 

論文がアクセプトされました

2017年のESHETアントワープ大会で報告した、ワルラスとスミス『国富論』の関係についての考察を発展させた論文が、このたび、European Journal of the History of Economic Thought 誌にアクセプトされました。

この学会報告については、このサイトでもお知らせしました。また学会報告後、滋賀大学リスク研究センターのEnglish Lunch Seminarでも報告をしました。学会やセミナー当日、コメントや質問をしてくださった方々に感謝いたします。

学会での報告要旨は、Researchgateに掲載しています。ローザンヌ大学ワルラス文庫の『国富論』への書き込みを手掛かりに、「見えざる手」とワルラスの一般均衡理論を結び付ける教科書的な解釈に一石を投じ、ワルラスとスミスの知られざる影響関係を明らかにする論文です。掲載論文は、加筆修正を経て、最初のバージョンよりもかなり発展した内容になっています。

 ジャーナルに掲載されるのは、2021年6月の予定です。詳細について、またこのサイトでもお知らせします。

 

書評 J.M. Keynes vs. F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, by Y. Sakai, 2019

滋賀大学名誉教授の酒井泰弘先生が2019年にSpringer社から出版された単行本についての私の書評 (英文)が『彦根論叢』の2020年夏号に掲載されました。電子ジャーナルで閲覧可能です。

(Book review) Kayoko MISAKI “Yasuhiro Sakai, J.M. Keynes Versus F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, Springer, 2019″ The Hikone Ronso (Shiga University) No. 424 ( Summer 2020) pp. 132-133.

本書は、ケインズとナイトが1921年にそれぞれ発表した不確実性に関する著作の比較考察を軸に、リスクと不確実性に関する思想史を300年以上さかのぼるとともに今後の可能性を示唆しています。経済理論や思想史専門以外の読者にも興味深く読める内容です。

 この本を読んで、経済学において不確実性をどう取り扱うかという問題は、結局、自然科学と経済学の違いにどう対峙するのかという問題に収束していくということを再認識させられました。本書で取り上げられているヒックスの歴史と統計学の関係についての考え方にも感銘を受けました。

「はるかなる手紙」展(第一期 コルソン)解説パンフレット

滋賀大学彦根キャンパスで、2020年1月に始まった企画展「はるかなる手紙―滋賀大学所蔵フランス貴重自筆書簡」(御崎加代子監修)は、コロナの影響で、4月末より休止しています。完了した第1期(2020年1月~4月)の「クレマン・コルソン」の展示については、会場で配布していた解説パンフレットがウエッブで閲覧できます(リンクはこちらです)。興味のある方は、ぜひご覧ください。

第2期「レオン・セー」の展示の準備は整っていますが、いつから開始するかは未定です。コロナが一日も早く収束し、展示とギャラリートークが再開できる日を心待ちにしています。

(「はるかなる手紙展」開催案内ウエッブページのリンクはこちらです

科研費獲得しました

令和2年度科研費 基盤研究(C)に応募していた研究課題「ワルラスにおけるリスク・不確実性・企業者-一般均衡理論の思想史的解明」の交付内定通知がきました。4年間の研究プロジェクトです。

 このプロジェクトのテーマにかかわる基礎的な考察として、滋賀大学経済学部付属リスク研究センター(今年度より滋賀大学経済経営研究所に組織替え)より、「ワルラスにおける企業者利潤とリスクー経済学史の観点から」という研究課題で、今年度の助成金を受け、この助成金によって、来る6月にthe History of Economic Society (HES)の年次大会(於オランダ・ユトレヒト)で論文を発表するはずでした。しかしながら、新型コロナウィルスのために、残念ながらこの学会は中止となってしまいました。

 この論文の発表は、本科研費プロジェクトの重要な準備作業でもあると考えていましたが、このような不測の事態により、発表時期の変更を余儀なくされました。年度内に別の国際学会で発表することを計画中です。コロナウィルスの被害が早く収束し、研究活動が正常に戻ることを祈るばかりです。