Revue d’histoire de la pensée économique 掲載「ワルラスの共感概念」

 2023年6月7日に私の論文 “Walras on Sympathy”が、フランスのジャーナル Revue d’histoire de la pensée économique に掲載されました。

MISAKI,Kayoko “Walras on Sympathy,” Revue d’histoire de la pensée économique, n° 15, 2023 – 1, 15-32.

この論文は、昨年7月にパリで開催されたシャルル・ジッド経済思想史学会で報告した論文を発展させたものです。学会報告の後、このジャーナルから誘いを受けて投稿し、通常の査読過程を経て、掲載が決定しました。この論文は、これまでほとんど注目されなかったワルラスの「共感」概念をとりあげ、アダム・スミスの概念と比較しています。 新古典派経済学の創始者の一人とされるワルラスは、人間の非利己的側面をどのようにとらえていたのか。実は、ワルラスは、一般均衡理論の構築にとりかかる前から「共感」概念を論じはじめ、同理論が完成した後も、ぶれることなく同じ議論を続けていました。この論文は、共感や人間性に関するワルラスの議論が、道徳の分野にとどまらず、分業などの概念を通じて彼の経済観そのものに関係していることを示しています。

 

 Revue d’histoire de la pensée économique は、経済学史を専門とするフランスの学術雑誌です。創刊は2016年ですが、その前身は、2015年9月に休刊した学術雑誌 Économies et Sociétés (cahiers de l’ISMEA) の「経済学史」部門です。Économies et Sociétésは、1944年に、経済学者フランソワ・ペルー(François Perroux, 1903-1987) が創刊した由緒ある雑誌で、私も大学院生時代、ここに掲載された多くの質の高い論文に取り組みました。まさか自分の論文がこの流れをくむジャーナルに掲載されるとは思ってもみませんでした。大変光栄なことだと感じています。

 

(追記)2023年6月13日 滋賀大のHPで紹介されました。記事はこちらです。