Book Reviews

書評 J.M. Keynes vs. F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, by Y. Sakai, 2019

滋賀大学名誉教授の酒井泰弘先生が2019年にSpringer社から出版された単行本についての私の書評 (英文)が『彦根論叢』の2020年夏号に掲載されました。電子ジャーナルで閲覧可能です。

(Book review) Kayoko MISAKI “Yasuhiro Sakai, J.M. Keynes Versus F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, Springer, 2019″ The Hikone Ronso (Shiga University) No. 424 ( Summer 2020) pp. 132-133.

本書は、ケインズとナイトが1921年にそれぞれ発表した不確実性に関する著作の比較考察を軸に、リスクと不確実性に関する思想史を300年以上さかのぼるとともに今後の可能性を示唆しています。経済理論や思想史専門以外の読者にも興味深く読める内容です。

 この本を読んで、経済学において不確実性をどう取り扱うかという問題は、結局、自然科学と経済学の違いにどう対峙するのかという問題に収束していくということを再認識させられました。本書で取り上げられているヒックスの歴史と統計学の関係についての考え方にも感銘を受けました。

書評 M.H.Turk, The Idea of History in Constructing Economics, 2016

2016年に出版されたMichael.H.Turk氏の著書についての私の書評(英文)が、経済学史学会のジャーナル『経済学史研究』の2017年7月号に掲載されました。

Kayoko MISAKI, Book Review, Michael H.Turk, The Idea of History in Constructing Economics, Routledge, 2016, The History of Economic Thought, 59-1, July 2017, pp.107-108.

この本は、18世紀のケネーから21世紀のピケティまでを対象に、経済学はどのようにして「科学」としての性格を与えられてきたのか、そして経済学と「歴史」との懸け橋は可能かという、経済学史における根源的な二つの大問題に同時に取り組んだ意欲作です。経済学が「科学」としての性格を色濃く帯びるようになるきっかけとなったのは、限界革命とワルラス一般均衡理論の登場であることは周知の事実ですが、ワルラスが同時代の数学者たちの考え方を正しく理解しなかったことがその後の新古典派の方法論を決定づけたという刺激的な解釈が出発点となっています。またマックス・ウェーバーと新古典派経済学との関係についての議論も、経済学はいかにして歴史学的な視点をもった学問として再構築されるうるのか、その可能性を考える上で多くの示唆に富んでおり、たいへん興味深く読みました。

書評 米田昇平『経済学の起源 フランス 欲望の経済思想』

米田昇平氏の最新の著作『経済学の起源 フランス欲望の経済思想』(2016)についての私の書評が、『経済学史研究』58巻2号(2017年1月25日号)に掲載されました(92-94頁)。(書評の本文はこちらです)

現代経済学の知られざる起源を扱ったこの著作は、イギリスでスミスの『国富論』が公刊されるずっと前、フランスにおいて、人間の本性と欲望について、また利己心をもった人間が織りなす社会秩序について、非常に活発で意義深い論争が繰り広げられていたことを示しています。経済学史や社会思想史に興味がある方のみならず、現代経済学を専門とする方々にも、おすすめします。