Book Reviews

書評 M.H.Turk, The Idea of History in Constructing Economics, 2016

2016年に出版されたMichael.H.Turk氏の著書についての私の書評(英文)が、経済学史学会のジャーナルの最新号に掲載されました。

Kayoko MISAKI, Book Review, Michael H.Turk, The Idea of History in Constructing Economics, Routledge, 2016, The History of Economic Thought, 59-1, July 2017, pp.107-108.

この本は、18世紀のケネーから21世紀のピケティまでを対象に、経済学はどのようにして「科学」としての性格を与えられてきたのか、そして経済学と「歴史」との懸け橋は可能かという、経済学史における根源的な二つの大問題に同時に取り組んだ意欲作です。経済学が「科学」としての性格を色濃く帯びるようになるきっかけとなったのは、限界革命とワルラス一般均衡理論の登場であることは周知の事実ですが、ワルラスが同時代の数学者たちの考え方を正しく理解しなかったことがその後の新古典派の方法論を決定づけたという刺激的な解釈が出発点となっています。またマックス・ウェーバーと新古典派経済学との関係についての議論も、経済学はいかにして歴史学的な視点をもった学問として再構築されるうるのか、その可能性を考える上で多くの示唆に富んでおり、たいへん興味深く読みました。

ワルラスとイスナール

ESHET2017アントワープ大会で初めて会った研究者のひとりに、Richard van den Berg教授がいますvan den Berg教授は2006年にフランスの数理経済学者イスナール (1748-1803)についての研究書を公刊し、私は2007年にその書評を日本語で発表しました。「(書評) Richard van den Berg: At the Origins of Mathematical Economics: The Economics of A.N. Isnard (1748-1803), Routledge, 2006」『経済学史研究』49-1 (June, 2007)pp.192-193.

またこの著作に大いに刺激を受けて、私自身、ワルラスとイスナールとの関係についての研究に取り組みました。通説によれば、イスナールはワルラス一般均衡理論の先駆者であるということになっていますが、研究を進めるうちに問題はそれほど単純ではないことが分かってきました。通説を真っ向から批判する私の解釈は、  2009年の9月にローザンヌ大学ワルラス=パレート研究所で実施したセミナー“Walras and Isnard: Continuity and Discontinuity in the History of Economic Thought”で報告しました。しかしながらこの研究成果は、色々な事情で英語での公刊に至らず、日本語論文としてまとめたものを大学の紀要で発表するにとどまりました。「ワルラスとイスナール‐経済学史における連続と断絶」『滋賀大学経済学部研究年報』16, 2009, pp.101-112.

イスナール富論1781

ローザンヌ大学ワルラス文庫所蔵 イスナール『富論』1781

ESHET2017で初めてお会いするまで、van den Berg教授とは一度もコンタクトをとったことがなかったのですが、今回、これまでのいきさつをすべて伝えることができました。また、日本語でしか公刊できなかった私のイスナール研究の成果は、最近、意外な形で日の目を見ることになりました。ローザンヌ大学ワルラス=パレート研究所の定期公刊物に掲載された私の2009年のセミナーの報告要旨が、2016年に公刊された経済学史の教科書(3巻本)の「一般均衡理論」の章において、Alain Kirman教授によって、van den Berg教授の研究とともに引用されているのです。Gilbert Faccarello,Heinz D. Kurz (eds.) Handbook on the History of Economic Analysis, Volume III, Developments in Major Fields of Economics, Edward Elgar Publishing. 2016

これはたいへんうれしかったです。フランスの18世紀の経済思想史はたいへん奥深く、未解明の部分も多く残されているので、今後もじっくりと取り組んで行きたいと思っています。

書評 米田昇平『経済学の起源 フランス 欲望の経済思想』

米田昇平氏の最新の著作『経済学の起源 フランス欲望の経済思想』(2016)についての私の書評が、『経済学史研究』58巻2号(2017年1月25日号)に掲載されました(92-94頁)。

現代経済学の知られざる起源を扱ったこの著作は、イギリスでスミスの『国富論』が公刊されるずっと前、フランスにおいて、人間の本性と欲望について、また利己心をもった人間が織りなす社会秩序について、非常に活発で意義深い論争が繰り広げられていたことを示しています。経済学史や社会思想史に興味がある方のみならず、現代経済学を専門とする方々にも、おすすめします。