作成者: kayokomisaki

Professor of Economics, Historian of Economic Thought

Discussion Paper ワルラスのJ.B. セー批判:企業者と自由放任主義

 滋賀大学経済経営研究所からDiscussion Paper(英文)を発行しました。論文のファイルは、以下からダウンロード可能です

No.E-19 Date:2022.11 Title:Walras’s Critique of Jean Baptiste Say :Entrepreneur and Laissez-Faire Author:Kayoko MISAKI

ワルラスの一般均衡理論がセーの経済学、特に企業者理論から大きな影響を受けていることはよく知られていますが、ワルラスがセーとその後継者たちの自由放任主義を厳しく批判し、自分が自由放任主義者と誤解されることを恐れていたことはあまり知られていません。本論文の目的は、セーの影響下で、自らの企業者理論と一般均衡理論を構築したワルラスが、その理論をもって、どのように自由放任主義を批判したかを示すことです。

 このペーパーの内容を、これからさらに発展させ、来年、国際学会で報告する予定です。また最終稿は、2024年にRoutledgeから発行される予定の私の単行本 Léon Walras’s Economic Thought : The General Equilibrium Theory in Historical Perspectiveの第2章になる予定です。

 皆様からのコメントを歓迎します。

貴重書展示 レオン・ワルラスの自筆書簡

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2022年秋の展示は、滋賀大学が所蔵するレオン・ワルラスの(Léon Walras, 1834-1910)の自筆書簡2通(1898年7月19日付と1901年6月29日付)です。
 現在、ワルラスの重要書簡の大部分は、ワルラス研究者ウィリアム・ジャッフェが1965年に公刊した書簡集(全3巻)に収められていますが、今回展示する2通の書簡は、この書簡集には収められていないものです。1898年7月19日付の書簡についての詳細な解説は、『彦根論叢』第434号(2023年1月・冬号)に「資料紹介」として、掲載される予定です。

 展示の様子と私の解説文はこちらをご覧ください。展示コーナーには、この書簡のテキストと和訳も展示してあります。

 

ワルラス研究(単行本・英文書籍)の出版が決まりました

 このたび、私のワルラス研究をまとめた単行本が、Routledge社 ( London &NewYork ) から出版されることが決定しました。

このサイトでもお知らせをしてきた、2016年以降の国際学会での報告や、ジャーナル掲載論文が中心になります。刊行は2024年の予定です。

 これまで英語でたくさんの研究成果を発表してきましたが、単行本を出版するのは初めてです。少しでも良い内容になるよう、現在、仕上げの作業に全力投球をしています。

GIDE 2022 Paris大会での報告

 2022年7月7日から9日まで、パリで開催された、シャルル・ジッド学会 第19回国際大会で、論文を発表しました。学会は、パンテオン広場にある、パリ第Ⅰ大学の由緒ある校舎で開催されました。

(プログラムはこちらです

3年ぶりのフランスでの学会報告でした。大会のテーマである、“Bonheurs et malheurs de l’agent économique” (経済主体の幸福と不幸)にちなんで、私は、ワルラスの共感概念について、報告をしました。論文では、ワルラスとアダム・スミスの共感概念の比較をしているので、スミスのセッションで報告することになり、スミス研究者から、貴重なコメントをもらうことができました。

フランスに到着してまずびっくりしたのは、マスクを着けている人がほとんどいなくて、コロナ以前の生活にほぼ戻っているということでした。さらに学校の夏休み期間に入っているので、空港や観光地は、欧米からの家族連れの観光客であふれかえっており、これまで見たことのないような混雑ぶりでした。

ただしコロナの感染者数は、フランスでも急増しており、学会直前に感染して、参加をキャンセルした人もいました。学会では、急遽、校舎内でのマスクの着用が推奨され、コーヒー・ブレイクやランチは、予定を変更して、屋内ではなく、中庭で提供されました。パリの気温は高かったですが、日本とは違って乾燥しているので、屋外での食事は、とても心地よかったです。

ウクライナでの戦争の影響による航路迂回により、日本とヨーロッパ間のフライト時間は普段より長く、また現地で帰国のための検疫書類の準備もしなくてはならず、いつもより疲れる出張でしたが、多くの研究者たちと再会の喜びを分かち合い、充実した時間を過ごすことができました。

セミナー開催報告:ワルラスと『国富論』

2022年6月30日、滋賀大学経済研究所の先端研究セミナーで講演をしました。(当日の様子については、こちらをご覧ください。)

当日は、オンライン参加の方も含め、多くの方から、興味深い質問、貴重なコメントをいただき、私自身、大変勉強になりました。参加してくださった皆さん、どうもありがとうございました。

GIDE 学会パリ大会で報告します

 2022年7月7日から9日まで、フランスのパリで開催される、シャルル・ジッド学会第19回国際大会で、論文発表することになりました。ジッド学会は、フランスの経済学者シャルル・ジッド(Charles Gide, 1847-1932)にちなんで設立された、経済思想を専門とする由緒ある学会です。

 今年の大会のテーマは、“Bonheurs et malheurs de l’agent économique” (経済主体の幸福と不幸)です。私は、“Walras on Sympathy” (ワルラスの共感概念)というタイトルの論文を発表します。(プログラムはこちらです)ワルラスの社会経済学の内容が中心になりますが、シャルル・ジッドはワルラスの社会経済学の数少ない理解者の一人だったので、不思議な縁を感じています。

 学会は、歴史的建造物であるパンテオンの校舎で行われます。

フランスで学会報告をするのは実に3年ぶりなので、多くの研究仲間に再会できることを楽しみにしています。

 

ギャラリートーク開催しました

 2022年5月19日、滋賀大学附属図書館において、春学期の貴重書展示についてのギャラリートーク「スミス『国富論』とJ.B.セー『経済学概論』」(第1回)を開催しました。当日の様子が、図書館ホームページに紹介されています。(ページはこちら

 学生の方、教員の方に参加していただき、興味深い質問をたくさんしていただき、楽しく刺激的な時間を皆さんと過ごすことができました。2回目は6月16日に開催します。参加申し込みはこちらです(学内の方限定です)。

(追記)6月16日 第2回目のギャラリートークを開催しました。当日の様子は、こちらでご覧いただけます。

(写真は図書館HPより拝借しました)

セミナーのお知らせ

 2022年6月30日に、滋賀大学経済経営研究所の先端研究セミナーで講演をします。昨年公刊された私の論文、Kayoko MISAKI “Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith?,” The European Journal of the History of Economic Thought 28-3, 2021, 404 – 418 . https://doi.org/10.1080/09672567.2020.1837198.の内容を解説します。

 この論文の内容については、5年前、ジャーナルに投稿する前に、同研究所の English Lunch Seminarで報告し、多くの学生さんたちに参加していただきました。今回は日本語で、より詳細な内容を報告します。以下がセミナーの概要です。 

 本セミナーでは、2021年6月にThe European Journal of the History of Economic Thought誌に掲載された私の論文”Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith? “(レオン・ワルラスと『国富論』:ワルラスが実際にスミスから学んだこととは何か?)の内容を日本語で解説します。ワルラスの一般均衡理論は、スミスの「見えざる手」を理論的に発展させたものというのが、経済学の教科書に書かれている、一般的な解釈ですが、そのような常識に真っ向から挑むことが本論文の目的です。ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査も手掛かりに、ワルラスとスミスとの知られざる影響関係を明らかにします。

このセミナーは、学外の方も参加可能です。興味のある方はぜひご参加ください。セミナーの詳細と申し込みはこちらです。

ギャラリートークのお知らせ

  滋賀大学附属図書館貴重書展示コーナーでは、2022年春の展示として、アダム・スミスの『国富論』とJ.B.セーの『経済学概論』を展示しています。この展示について、5月と6月にギャラリートークを行うことになりました。コロナウィルスの感染状況を踏まえ、今回は学内の方(教職員と学生)のみを対象とさせていただきます。

 詳細についてはこちらをご覧ください。皆様の参加をお待ちしています。

貴重書展示 スミス『国富論』とセー『経済学概論』

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2022年春の展示は、アダム・スミスの『国富論』(1791年バーゼル版)とJ.B.セー『経済学概論』(1832年アメリカ版英訳第5版)です。新入生の皆さん、ぜひご覧ください。

 今回展示する『国富論』は非常に保存状態が良く、美しい本です。有名な「見えざる手 (invisble hand)」が登場するページが開いてありますので、探してみてください。またJ.Bセーは、ケインズが批判した「セー法則(Say’s law)」で有名ですが、シュンペーターよりも100年以上前に企業家論を展開していた経済学者としても注目されています。

 以下が私の説明文の抜粋です。

 1776年、アダム・スミス(Adam Smith, 1723⁻1790)の主著『国富論』(原題「諸国民の富の原因と性質に関する研究」)の初版が、ロンドンで出版された。『国富論』は、現在でも経済学の古典として不動の地位を占めている。今回展示するのは、1791年にスイスのバーゼルで出版されたものであるが、これは、本国イギリス以外で初めて出版された英語版である。『国富論』は、世界各国の経済学や経済政策、近代化の思想に大きな影響を与えたが、それが本格的に各国で普及するのは19世紀になってからである。その際、『国富論』の解説書として、普及したのがフランスの経済学者J.B.セー(Jean Baptiste Say, 1767-1832)の『経済学概論』(初版1803年)であった。セーの著作は、スミスの『国富論』よりも説明がわかりやすく、スミスよりも企業者の役割を重視していた点で、特にアメリカで人気を博した。セーの考える企業者の役割には、知識の応用、資本の調達、指揮、監督、管理、危険負担、技術革新などが含まれ、生産性の上昇の要因として、スミスが分業のみを議論していたのとは対照的である。セーの考え方は、現在も企業家論、イノベーション論の源流として注目を浴びている。本図書館は、セーの『経済学概論』のアメリカ版英訳第5版(1832年)を所蔵している。

展示の様子はこちらです。次回の展示替えは、9月を予定しています。