Author: kayokomisaki

Professor of Economics, Historian of Economic Thought

CFP 国際ワルラス学会 AIW 2019 Lausanne

国際ワルラス学会 The International Walras Association の第10回目の大会が2019年の9月にローザンヌ大学で開催されることになり、このたびCall for Papers が発表されました(ウエッブ・サイトはこちらです)。私は、本大会の Scientific Committee (プログラム委員会)の一員を務めることになりました。

大会のテーマは ”Walras- Neoclassical?” 「ワルラスは新古典派か?」です。経済学の教科書でおなじみの、限界革命のトリオとしてのワルラス、新古典派の元祖としてのワルラスという解釈を、今一度問い直すという、大変刺激的なテーマになっています。様々な論題が可能ですが、ワルラス以外の新古典派経済学者のみを取り上げてもよいことになっており、分野を超えた新たな交流が楽しみです。ちなみに私は日本で最初にワルラスの翻訳を公刊した経済学者、早川三代治について報告する予定です。

 

国際ワルラス学会 AIWは1997年に結成され、これまで大体2年ごとに大会を開催してきました。今回は前回のパリ大会から4年ぶりで、しかも記念すべき第10回大会ということもあって、関係者の気合いの入り方がいつもと違います(笑)。これまでに会長を務めた者は私も含めて全員、今回のプログラム委員会に参加していますが、これは大変意義のあることだと考えています。日本からも多くの方がAIW2019ローザンヌ大会に参加されることを希望しています。

資料紹介 Guizot’s letter (1833)

滋賀大学附属図書館が所蔵するフランソワ・ギゾーの書簡(1833年8月13日付)の紹介論文がこのたび公刊されました。

(資料紹介)御崎 加代子「滋賀大学図書館所蔵 François Guizot の自筆書簡(1833)について」『滋賀大学経済学部研究年報』25. 2018, pp.123-126.

この書簡を現在、図書館の貴重書コーナーに展示していることについては、すでにこのサイトでもお知らせしました。(記事はこちらです

 

本資料をみつけたのは全くの偶然でした。最初は誰が書いた手紙なのかもわかりませんでしたが、一目見た途端、美しく力強い筆跡に、心を奪われてしまいました。これまでいろいろな経済学者たちの筆跡に触れる機会がありましたが、偉大な歴史上の人物の筆跡にはやはり、ただならぬ雰囲気が漂っています。

紹介論文には、書簡の画像も掲載しました。この気品に満ちた迫力ある筆跡をぜひご鑑賞ください。(電子ジャーナルはこちらです

推薦図書 城一夫『フランスの配色』(2011)

私の研究テーマとは直接関係しませんが、滋賀大学附属図書館の「私の推薦するこの一冊」コーナーに、城一夫『フランスの配色』パイインターナショナル(2011)を推薦しました。推薦文はこちらです。フランスの洗練された美を味わってみたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

新講義 History of Economic Ideas and Globalization

2018年10月より、滋賀大学経済学部で新科目 History of Economic Ideas and Globalizationを開講することになりました。英語による少人数講義です。現代のグローバル経済を理解するうえで重要な鍵となる経済学の概念がどのような歴史的背景のもと誕生したのか考察します。留学生の履修を想定して、日本の近代化の歴史についても触れます。以下が講義の計画です。

1.Introduction 序論
2.Invisible Hand 1 見えざる手1
3.Invisible Hand 2 見えざる手2
4.Laissez-Faire and Free Trade レッセ・フェールと自由貿易
5.Poverty 貧困
6.Industry インダストリィ
7.Comparative Advantage 比較優位
8.Utilitarianism 功利主義
9.Perfect Competition 完全競争
10.Entrepreneurship 企業者
11.Risk and Uncertainty リスクと不確実性
12.Economic Ideas and Japanese Modernization 日本の近代化と経済思想
13.Presentation レポート発表
14.Presentation レポート発表
15.Free discussion 自由討論

すでに経済学部では、日本語による専門科目「経済学史」「現代経済学史Ⅰ」「現代経済学史Ⅱ」を開講していますが、これら3科目が学者別、学派別にそれぞれの学説の意義を取り上げるのに対して、この英語講義は、概念別にその歴史的背景をとりあげ、歴史の予備知識があまりなくても容易に理解できるように配慮しています。ちなみにこの講義では、以下のような経済学者たちが登場します。

貴重書展示 ギゾーの書簡(1833)

 滋賀大学附属図書館の貴重書コーナーの展示替えを行いました。2018年秋の展示は、フランソワ・ギゾーの自筆書簡(1833)です。(展示の様子はこちら

 

 

以下、私の解説文の抜粋です。

ギゾー(François Pierre Guillaume Guizot,1787-1874)は、19世紀前半に活躍したフランスの歴史家、政治家である。今回展示するのは、本学図書館が所蔵する、1833年8月13日付のギゾーの自筆書簡である。この書簡は、2018年2月に購入した古書、ギゾーの代表作『ヨーロッパ文明史:ローマ帝国の崩壊からフランス革命まで』の英訳版(1839)に偶然貼り付けられていた。ギゾーはフランスの七月王政期、1832年から1837年まで公共教育大臣として、数々の教育改革に携わった。この書簡が書かれた約二か月前、1833年6月23日には、有名な初等教育法案「ギゾー法」が成立している。この書簡にも公共教育省の便せんが使われ、肩書も「公共教育大臣」となっている。書簡の相手は、当時ヘブライ語学の第一人者であったエティエンヌ・カトルメール(Etienne Quatremère)で、その内容は、ヘブライ語の文法教育をめぐるものであり、極めて礼儀正しい文体で書かれている。

なおこの書簡の内容と日本語訳は、『滋賀大学経済学部研究年報』第25巻(2018年11月末刊行予定)に「資料紹介」として掲載される予定です。公刊されたら、このサイトでもお知らせします。
今回は、この書簡が書かれた1830年代に出版された、ノディエ著『歴史的パリ』(Paris historique : promenade dans les rues de Paris, par Charles Nodier, Auguste Regnier et Champin ; avec ; avec un rèsumè de l’histoire de Paris, par P.Christian[pseud.]
Paris:F.G.Levrault, 1838-1839)も同時に展示しています。パリの歴史を美しい挿絵入りで解説した本で、当時の街の雰囲気が味わえます。

貴重書展示コーナーの次回の展示替えは、2019年3月を予定しています。

ESHET 2018 Madrid大会での報告を終えて

2018年6月7日から9日までスペインのマドリッドで開催された、European Society for the History of Economic Thought(ESHET) の第22回年次大会での論文報告を終えて帰国しました。

会場となったマドリッド・コンプルテンセ大学は15世紀に設立された由緒ある大学で、18世紀にはいち早く女性に博士号を与えたことでも知られています。今回の学会は、郊外にあるSomosaguasキャンパスで開催されました。マドリッド中心部からは地下鉄やトラムを使って移動する必要があり、少し不便でした。

 

私は二日目のセッションで、‟Léon Walras on the Worker-Entrepreneur”(詳しい内容はこちら)という論文を発表しました。聴衆はそれほど多くありませんでしたが、制限時間内にすべて返答できないほど、多くのコメントと質問がありました。予想していた通り、この論文は、J.B.セーの専門家にとってたいへん興味深かったようです。今後の共同研究につながりそうな予感です。

 

学会のディナー・パーティは、服飾博物館内にある有名レストラン Café de Orienteで開催されました。スペインの夕食は一般的に遅いのですが、このディナーも9時に始まりました。6月は日が長いので夜9時でもまだまだ明るかったです。1時間ほどは戸外でアペリティフを楽しみ、コース料理が始まったのは10時頃、デザートを終えると12時を過ぎていました。この夜はたいへん寒かったうえ、慣れない深夜の食事で胃腸が悲鳴をあげそうでした。

学会開催中、多くの研究者たちと再会し、また新たに知り合った研究者たちと研究情報を交換することができました。新たなプロジェクトへの誘いも受け、私の研究活動にとってはたいへん有意義な機会となりました。

ただ今回の出張は、帰国便が航空会社の突然のストでキャンセルになるなど、様々なハプニングに見舞われ、正直言って疲れ果ててしまいました。日本に帰って来れてほっとしています。

ESHET 2018 Madrid大会で報告します

2018年6月7日から9日までスペインのマドリッド・コンプルテンセ大学で、European Society for the History of Economic Thought(ESHET) の第22回年次大会が開かれます(大会HPはこちら)。今回の共通テーマはEntrepreneurship, knowledge and employmentです。

私はこの大会で、”Léon Walras on the Worker-Entrepreneur” という論文を報告することになりました(報告論文サイトはこちら)。ワルラス一般均衡理論における企業者利潤ゼロの仮定は、ワルラス・モデルの非現実性を象徴するものとして知られていますが、そこにこめらた現実的な意図はほとんど知られていません。この論文では、ワルラスが一般均衡理論を完成する前にとりくんだアソシアシオン(協同組合)運動の構想や、晩年の未発表メモなどを手掛かりに、企業者機能を兼ねる労働者について、ワルラスがどのような議論を展開しているか、考察します。これは、マルクスなどの同時代の社会主義者たちの利潤論に対するワルラスの批判や、ワルラスの企業者論に大きな影響を与えたとされるJ.B.セーとワルラスの議論の本質的な違いを理解するための重要な鍵になると考えています。

さて6月のヨーロッパは、日が長く、過ごしやすい天気で、花も満開です。このような美しい季節にマドリッドを訪れるのはとても楽しみです。