滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2024年春の展示は、「重商主義をめぐって」というテーマで、チャイルド、ボワギルベールの著作の展示を行っています。
The Rare Book Exhibit Corner at Shiga University Library has been rearranged, and the spring 2024 exhibit is themed “On Mercantilism,” featuring the works of Child and Boisguilbert.
展示の様子はこちらです。以下が私の解説文の抜粋です。
16世紀から18世紀にかけて、イギリス、オランダ、フランスなどのヨーロッパ諸国では、「重商主義(mercantilism)」と呼ばれる経済政策がとられた。重商主義とは、国富の源泉を貨幣に見出し、貿易差額の獲得を目標として、輸出産業の保護や強い海軍力をめざす政策体系である。重商主義は、アダム・スミスの『国富論』(1776)の刊行や産業革命の進行によって、やがて解消される。
イギリス人のチャイルド(Josiah Child, 1630-1699)は貿易商人で、イギリス東インド会社の総裁などとして活躍した。彼は重商主義の経済理論家のひとりで、主著は『新交易論(A new discourse of trade)』(初版1693年)である。富裕増大の最大原因は低利子率であると主張し、最高法定利子率の引下げ論を展開した。
ボワギルベール(Pierre Le Pesant Boisguilbert, 1646-1714)は、フランスの経済学者で、1695年に主著『フランス詳論 (Le Detail de la France) 』を匿名で出版した。彼はこの中で、ルイ14世紀治下のフランス農村経済がいかに荒廃しているかを詳細に記述し、その原因として、財務総監コルベールが強行した重商主義政策(コルベール主義)を厳しく批判した。ボワギルベールは、農業重視、自由放任、租税改革などを唱え、1707年に著作集『フランス詳論』を出版したが、コルベール主義をあまりにも激しく批判したため、発禁処分となった。
展示ケースでは、アダム・スミス『国富論』の展示も行っています。重商主義を批判している章が開いてありますので、学生の皆さんはぜひ自分の目で確認してください。6月にはギャラリートークも予定しています。皆さんの参加をお待ちしています。