日本ベンチャー学会での講演

 2021年12月3日から5日まで日本ベンチャー学会(JASVE)第24回全国大会 が開催されました。私は5日の午後「シュンペーターとイノベーション:その歴史的・思想的背景」という講演をしました。この大会はハイブリッド方式で開催され、私は主催校である大阪経済大学から参加しました。対面形式で学会に参加したのは実に2年ぶりです。

経営学の学会に招かれたのは、これが初めてです。私の報告の意図は、シュンペーターの企業者概念を、彼が最も影響を受けたワルラスやその源流にあるセーやカンティロンなど、フランスにおける企業者概念の歴史から再考し、経営学におけるシュンペーターとカーズナーとの対比についても新たな理解方法を示すことでした。

 対話者の伊藤 博之氏(大阪経済大学教授)をはじめとして、参加者の皆さんから大変刺激的な質問とコメントをいただきました。私のこれまでの研究が、当初は予想していなかった分野で多くの方々の研究に役立つことがわかり、とてもうれしかったですし、ここで得た知見をもとに、私自身の研究もさらに発展しそうです。今後もこのような新しい挑戦を続けていきたいと思います。

Most read articles

 The European Journal of the History of Economic Thoughtの2021年6月号 Volume 28, Issue 3がこのたび公刊されました。ワルラスとスミス『国富論』の関係を論じた私の論文がこの号に掲載されています。

Kayoko MISAKI “Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith?,” The European Journal of the History of Economic Thought 28-3, 2021, 404 – 418 (published on line, October 2020): https://doi.org/10.1080/09672567.2020.1837198.

この論文はすでに昨年の10月にオンライン上で公刊されており、このサイトでも論文の内容とともにお知らせしました(記事はこちら)。現在、この論文は、このジャーナルの Most read articles (最も読まれている論文)の10番目にランクインしています。経済学史のトップジャーナルのひとつに論文が掲載されたこともうれしいですが、経済学史の分野を超えて多くの皆さんに論文が読まれていることも大変うれしいです。今後はこの論文が末永く、多くの研究者に引用されることを願っています。

(追記)

2022年12月26日
本論文へのアクセス数が5,000に達しました。多くの方々に読んでいただきありがとうございます。

EJHET 掲載論文 ワルラスは『国富論』をどう読んだのか?

 The European Journal of the History of Economic Thought 誌にアクセプトされた、ワルラスとアダム・スミスとの関係を探った私の論文が、紙媒体に先駆けて、2020年10月27日付でオンラインで公刊されました。この論文は、オープンアクセスなので、以下のリンクから、全文の参照およびダウンロードが可能です。

Kayoko Misaki, “Léon Walras and The Wealth of Nations: What Did He Really Learn from Adam Smith?,” The European Journal of the History of Economic Thought (Published on line, October 2020): 1–15, https://doi.org/10.1080/09672567.2020.1837198.

この論文は、ローザンヌ大学ワルラス文庫の調査を手掛かりに、ワルラスとアダム・スミスとの知られざる影響関係を明らかにする考察です。ワルラスの一般均衡理論は、スミスの「見えざる手」を理論的に発展させたものというのが、経済学の教科書に書かれている、一般的な解釈ですが、そのような「常識」に真っ向から挑んだのが、この論文です。この解釈については実は、アダム・スミス研究者による多くの反論がありますが、ワルラス研究者からはこれまでまったく反論がなされていなかったのです。また逆にワルラスはスミスから影響を受けていないという、シュンペーターやジャッフェの解釈を覆すことも、この論文は意図しています。ジャーナルの査読の過程で、当初は想定していなかった、ワルラスとスミス『道徳感情論』との関係にまで考察を拡げることになり、論文の内容が大きく発展しました。アドバイスしてくれたレフェリーに感謝しています。

この論文が、オープンアクセスにより、経済学史研究の枠を超えて、様々な分野の経済学者に読まれ、実りある議論につながってゆくことを期待しています。

科研費獲得しました

令和2年度科研費 基盤研究(C)に応募していた研究課題「ワルラスにおけるリスク・不確実性・企業者-一般均衡理論の思想史的解明」の交付内定通知がきました。4年間の研究プロジェクトです。

 このプロジェクトのテーマにかかわる基礎的な考察として、滋賀大学経済学部付属リスク研究センター(今年度より滋賀大学経済経営研究所に組織替え)より、「ワルラスにおける企業者利潤とリスクー経済学史の観点から」という研究課題で、今年度の助成金を受け、この助成金によって、来る6月にthe History of Economic Society (HES)の年次大会(於オランダ・ユトレヒト)で論文を発表するはずでした。しかしながら、新型コロナウィルスのために、残念ながらこの学会は中止となってしまいました。

 この論文の発表は、本科研費プロジェクトの重要な準備作業でもあると考えていましたが、このような不測の事態により、発表時期の変更を余儀なくされました。年度内に別の国際学会で発表することを計画中です。コロナウィルスの被害が早く収束し、研究活動が正常に戻ることを祈るばかりです。

国際ワルラス学会 AIW 2019 Lausanne での報告を終えて

 2019年9月13-14日にスイスのローザンヌ大学で開催された、第10回国際ワルラス学会 (The 10th Conference of the International Walras Association ) への参加を終えて、帰国しました。(プログラムはこちらです)

 ローザンヌ大学のキャンパスは、郊外のレマン湖のほとりにあります。環境保護のため、キャンパス内には羊が放牧されていて、のどかな雰囲気です。

学会が行われたChâteau de Dorignyは、19世紀に、この土地を所有していた一族が建てた風情のある館です。

学会のテーマは、「ワルラスは新古典派か?」 « Walras—Neoclassical? » On Walrasian Historiographyでした。私は日本で初めてワルラスの翻訳を出版した経済学者、早川三代治の思想について報告をしました。

“Was Miyoji HAYAKAWA (1895–1962), the first Japanese translator of Walras, a neoclassical economist? “.

 ワルラスやパレートがローザンヌ大学(旧ローザンヌ・アカデミー)で教えていたころ、校舎は、ローザンヌ旧市街にありました。1909年にワルラスの経済学者生活50周年記念祭(Jubilé) が行われたリュミーヌ宮(Palais de Rumine)は、現在、博物館と美術館になっていて、豪華な内部を、自由に見学することができます。リュミーヌ宮の横には、ワルラスをローザンヌに招いたスイスの政治家Louis Ruchonnet(1834-1893)の銅像があります。50周年記念祭で、ワルラスはこの政治家にちなんで「リュショネと科学的社会主義」という記念講演を行いました。

 またその記念祭の際に作られたワルラスのメダルは、旧ローザンヌ・アカデミー(Ancienne Académie de Lausanne)にあります。このメダルには、「レオン・ワルラスに。1834年エヴルーに生まれる。ローザンヌ大学教授。経済均衡の一般的条件を最初に確立し、それゆえ『ローザンヌ学派』の創設者となった。50年にわたる無私の研究をたたえて。」という碑文が添えられています。

 旧アカデミーは、16世紀に建てられた美しい建物ですが、現在は中学校の校舎として使われています。今回は、訪問したのが日曜日だったため、残念ながら中に入れずメダルの撮影はできませんでした。

 国際ワルラス学会の第1回目が開催されたのは1999年のパリで、今回は記念すべき10回目でした。名誉なことに私は、ローザンヌ大学ワルラス=パレート研究所長のBaranzini教授と共に、次期の副会長に選ばれました。実は、9月14日は私の誕生日で、ダブルで皆さんにお祝いしてもらい、とてもうれしかったです。

 本学会も世代交代が進み、多くの若い研究者の皆さんに参加してもらうために、いかに魅力的な学会に改革してゆくのかが、今後の課題です。次回の学会は日本で開催する可能性が高いです。日本の多くの研究者の皆さんが参加されることを祈っています。