ESHET 2025 Torinoに参加しました

2025年5月22日から24日までイタリアのトリノで開催された the European Society for the History of Economic Thought (ESHET)の第28回年次大会に参加しました。開催場所のトリノ大学は、1404年設立のイタリアでもっとも古い大学のひとつです。美しいデザインの校舎は、世界的に知られています。

From May 22 to 24, 2025, I attended the 28th Annual Conference of the European Society for the History of Economic Thought (ESHET) held in Turin, Italy. The conference was hosted at the University of Turin, one of the oldest universities in Italy, founded in 1404. Its beautifully designed campus is renowned worldwide.

 約300の論文が報告される大規模な学会でした。私は、初日のセッションMacroeconomics (I) で、 Keith Jakee 教授(Florida Atlantic University)の論文 “Full Employment for All: Or, how Macroeconomics Displaced the Entrepreneur“の討論者を務めました。そして最終日の セッションAlternative Approaches to the Neoclassical School で、自分の論文 “Rethinking Kirzner’s Critique of Walras: Competition, Entrepreneurship, and Justice”を発表しました。このセッションの参加者は少なかったですが、司会を学会会長のRichard  Sturn  教授(University of Graz)が務め、この分野で著名な研究者たちが集まり、とても緊張しました。報告論文については、討論者の Johannes Schmidt 教授( Hochschule Karlsruhe – HKA)をはじめ、多く方々から有益なコメントをもらいました。また同じセッションでCuri  Luiz Felipe Bruzzi 教授 (Universidade Federal de Minas Gerais-UFMG)の“Roscher and Schmoller as Historians: the German Historical School Reconsidered”という論文の討論者も務めました。このような少数精鋭のセッションに参加できたのは、たいへん幸運でした。

It was a large-scale conference with approximately 300 papers presented. On the first day, I served as a discussant for Professor Keith Jakee (Florida Atlantic University) during the session “Macroeconomics (I)” for his paper titled “Full Employment for All: Or, how Macroeconomics Displaced the Entrepreneur.” On the final day, I presented my paper “Rethinking Kirzner’s Critique of Walras: Competition, Entrepreneurship, and Justice” during the session “Alternative Approaches to the Neoclassical School.” Although there were not many participants in this session, it was chaired by Professor Richard Sturn (University of Graz), the conference president, and featured prominent researchers in the field, making it a very tense experience. Regarding my paper, I received valuable comments from many participants, including Professor Johannes Schmidt (Hochschule Karlsruhe – HKA), who served as a discussant. Additionally, I served as a discussant for Professor Curi Luiz Felipe Bruzzi (Federal University of Minas Gerais – UFMG) during the same session for his paper titled “Roscher and Schmoller as Historians: The German Historical School Reconsidered.” It was a great honor to participate in such a stimulating session with a small but highly accomplished group of scholars.

 学会の公式ディナーは、19世紀のガレリア La Galleria Subalpinaの中にあるArcadiaという美しいレストランで開催されました。トリノ大学の校舎は、このガレリアからヒントを得てデザインされたのかなと思いました。

The official dinner of the conference was held at Arcadia, a beautiful restaurant located in the 19th-century La Galleria Subalpina. I wondered if the design of the University of Turin’s campus was inspired by this gallery.

滞在中、観光をする時間はありませんでしたが、ホテルから大学まで片道2キロ程度、毎日徒歩で通い、トリノの美しい旧市街の眺めを楽しみました。

My schedule during this trip was very tight, and I didn’t have any time for sightseeing, but the university was only about 2 km from the hotel, so I walked there and back and enjoyed the beautiful view of Turin’s old town.

At the Bibliothèque Nationale de France フランス国立図書館にて

2024年12月14日と16日、パリにあるフランス国立図書館を訪れました。滋賀大学が所蔵しているワルラスの書簡をめぐる謎を解くために決め手となる手稿が同図書館に所蔵されているため、それを閲覧することが今回の訪問の最大の目的でした。まずは、事前にネットで申請してあった研究者用のパスを受け取りに、同図書館のリシュリュー館を訪れました。

On December 14th and 16th 2024, I visited the Bibliothèque Nationale de France in Paris. The main purpose of this visit was to view the manuscript that are held in the library, which would be the key to solving the mystery concerning the letters of Walras held by Shiga University. First, I visited the Richelieu site of the library to receive the researcher’s pass that I had applied for online in advance.

リシュリュー館の閲覧室です。これほど美しい閲覧室は今まで見たことがなかったです。

These are the reading rooms of the Richelieu library. I’ve never seen such beautiful reading rooms.

フランス国立図書館の博物館も見学しました。歴史研究者必見の貴重な資料を見ることができました。

I also visited the museum of the BnF. I was able to see valuable materials that are a must-see for historical researchers.

そしていよいよ目当ての資料があるアルスナル図書館へ。1797年に設立された由緒ある文書館です。厳かな雰囲気の中で、貴重な資料を閲覧することができ、謎を解く重要な手がかりが得られました。

Finally, I went to the Arsenal Library, which holds the manuscript that I was looking for. It is a historic archive that was established in 1797. I was able to view the valuable materials in a solemn atmosphere and obtain precious clues to solving the mystery.

ローザンヌ大学への出張 Travel to the University of Lausanne 

 2024年2月28日から3月3日までの予定で、ローザンヌ大学のワルラス=パレート研究所に滞在しています。今回の出張の目的は、自著Léon Walras’s Economic Thought: The General Equilibrium Theory in Historical Perspectiveについての講演、ワルラス文庫の調査、共同研究の打ち合わせです。

私の講演には、研究所の若いスタッフや院生の皆さんがたくさん参加してくれて、活発な議論ができました。さらには名誉教授であるPascal Bridel教授も参加してくださり、大変光栄に思いました。この本は、Bridel教授の著書から大きな影響を受けて、執筆したからです。当日私の討論者を務めてくれたのは、長年の研究仲間であるRoberto Baranzini教授と、新進気鋭の研究者Luca Timponelli氏でした。私の著書を非常に丁寧に読んでいただき、その意義だけでなく問題点まで的確に指摘していただきました。やはりここは世界最高レベルのワルラス研究が行われている所だと改めて思いました。

ローザンヌ大学の現在のキャンパスは、郊外にあり豊かな自然と美しいレマン湖の風景に包まれていますが、旧市街にある元ローザンヌ・アカデミーの校舎にも行ってみました。ワルラスやパレートが教鞭をとった建物で、ワルラスをローザンヌ学派の創立者として讃えるブロンズのメダル(1909)が飾られています。実はここは現在、中学校の校舎になっているので、メダルは平日しか見ることができません。しかも特に案内版があるわけでもなく、場所はわかりにくいです。

この近くにあるリュミーヌ宮で、1909年にワルラス経済学者生活50周年記念祭が開催されました。リュミーヌ宮は現在、州の博物館の建物が入っていて、一般の観光客も内部を見ることができます。

今回のローザンヌ訪問は、パンデミックが収束してから初めての訪問で、実に4年半ぶりです。研究活動が正常化したことを、とても嬉しく思います。

リヨンでセミナーを開催しました

 2023年2月22日、フランスのリヨンでセミナーを開催しました。テーマは、“Compatibility of Efficiency and Fairness : How Walras has been Misunderstood ?” (効率と公正との両立:ワルラスはどのように誤解されてきたのか?)です。( プログラムはこちら)

このセミナーの目的は、2024年にRoutledge社から刊行予定の私の著作 Léon Walras’s Economic Thought : The General Equilibrium Theory in Historical Perspective ( レオン・ワルラスの経済思想:歴史的観点からの一般均衡理論)の序章の内容を紹介することです。

 ワルラスは純粋・応用・社会経済学という3つの分野からなる自らの経済学体系によって、効率と公正との両立という極めて現代的な課題に挑もうとしていました。しかしながら20世紀には、ワルラスの意図は誤解され、純粋経済学(一般均衡理論)の理論的発展のみに力点が置かれました。ワルラスは決して単純な個人主義者、自由主義者ではなく、国家と個人の領域の区別や国家の市場介入について積極的に提言を行っています。そして純粋経済学では経済主体の満足極大化行動を前提としつつ、社会経済学においては人間性についてより深い考察を行っていました。セミナーでは、このような内容を中心に、この本のねらいと各章の要約を示しました。

 私を招聘してくれたのは、Rebeca Gomez Betancourt リヨン第2大学教授です (セミナー後に一緒に食事を楽しみました:上の写真)。セミナーには同大学の大学院生の皆さんやリヨン政治学院の学生さんが参加してくれました。私が長年お世話になっている、Jean-Pierre Potierリヨン第2大学名誉教授からは、私の本の構想そのものについて有益なコメントをたくさんいただき、うれしかったです。 またフランスの経済学史学界の重鎮 Ramon Tortajada教授が、特別ゲストとしてわざわざグルノーブルから参加してくださり、中身の濃い議論を交わすことができて、感激しました。

 このセミナーの成果を十分に生かし、少しでも良い本に仕上がるよう努力したいと思います。

(追記)2023年4月20日 本セミナーの報告は、滋賀大学経済経営研究所のディスカッションペーパー(No.E-24)として公刊されました。Compatibility of Efficiency and Fairness:How has Walras been misunderstood? Discussion Paper Series E No.E-24 , The Institute for Economic and Business Research, Faculty of Economics, SHIGA UNIVERSITY, 2023.4.

GIDE 2022 Paris大会での報告

 2022年7月7日から9日まで、パリで開催された、シャルル・ジッド学会 第19回国際大会で、論文を発表しました。学会は、パンテオン広場にある、パリ第Ⅰ大学の由緒ある校舎で開催されました。

(プログラムはこちらです

3年ぶりのフランスでの学会報告でした。大会のテーマである、“Bonheurs et malheurs de l’agent économique” (経済主体の幸福と不幸)にちなんで、私は、ワルラスの共感概念について、報告をしました。論文では、ワルラスとアダム・スミスの共感概念の比較をしているので、スミスのセッションで報告することになり、スミス研究者から、貴重なコメントをもらうことができました。

フランスに到着してまずびっくりしたのは、マスクを着けている人がほとんどいなくて、コロナ以前の生活にほぼ戻っているということでした。さらに学校の夏休み期間に入っているので、空港や観光地は、欧米からの家族連れの観光客であふれかえっており、これまで見たことのないような混雑ぶりでした。

ただしコロナの感染者数は、フランスでも急増しており、学会直前に感染して、参加をキャンセルした人もいました。学会では、急遽、校舎内でのマスクの着用が推奨され、コーヒー・ブレイクやランチは、予定を変更して、屋内ではなく、中庭で提供されました。パリの気温は高かったですが、日本とは違って乾燥しているので、屋外での食事は、とても心地よかったです。

ウクライナでの戦争の影響による航路迂回により、日本とヨーロッパ間のフライト時間は普段より長く、また現地で帰国のための検疫書類の準備もしなくてはならず、いつもより疲れる出張でしたが、多くの研究者たちと再会の喜びを分かち合い、充実した時間を過ごすことができました。