Shiga University

貴重書展示 トマス・モア『ユートピア』

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。

2021年春の展示は、トマス・モア『ユートピア』(仏語版 1715)です。この著作のタイトルは、新入生の皆さんにもおなじみでしょう。美しい挿絵のコピーも一緒に展示していますので、ぜひ楽しんでください。

展示の様子はこちらです。

私の解説文の抜粋は以下の通りです。

トマス・モア(Thomas More, 1478-1535)は、法律家の子としてロンドンに生まれ、オクスフォード大学で学んだ。オランダのエラスムスから影響を受け、人文主義者の一人として才能を発揮すると同時に、政治家としても活躍した。当時の国王ヘンリ8世の信任を得て、1529年には、大法官の地位にまで上り詰めた。しかしながら、モアは、カトリックの立場から、国王の離婚を認めなかったため、ロンドン塔に投獄され、1535年、反逆罪で処刑された。モアは、1516年に『ユートピア』というタイトルの著作を、ラテン語で出版した。モアは、この著作において、当時のイギリスの「囲い込み」政策がもたらした、社会の悲惨な状況を批判すると同時に、理想的な社会である「ユートピア」(「どこにもない場所」という意味)を描写した。「ユートピア」という言葉は、やがて「理想郷」の代名詞となり、モアの著作は、ユートピア思想の源流として、現代にいたるまで大きな影響力を及ぼしている。1715年に出版された、仏語版『ユートピア』のタイトルは「英国の大法官、トマス・モアのユートピア:人々の不幸を癒し、人々に完全な幸福をもたらすための斬新なアイデア」となっている。仏語版には、物語の内容を伝える、美しい挿絵が掲載されている。 ユートピア島では、当時の社会とは違い、犯罪者は処刑せず、奴隷にして労働に従事させることになっていた。一般的な人々の労働時間は一日6時間で、学問や文化的活動、娯楽にあてる時間があった。大きく快適な病院が建設され、病気になっても安心して治療を受けることができた。病人以外の人々も、昼食と夕食は会館で配給され、共同で食事をしていた。その他、男女の労働の違い、結婚と離婚についてのしきたり、宗教や死生観など、理想社会における人々の生活が詳細に叙述されている。

次回の展示替えは、10月を予定しています。

「はるかなる手紙展」第3期ギゾーの書簡 展示始まりました

 滋賀大学彦根キャンパスで開催中の「はるかなる手紙展」は、2021年2月1 日より第3期「フランソワ・ギゾー」が始まりました。ギゾーが公教育大臣として執筆した、1833年の書簡を公開しています。コロナ禍の中、お越しになることが難しい方は、ウエッブでパンフレットを公開していますので、そちらをご覧ください。

本展示は昨年の1月から始まっていますが、コロナのために、ギャラリートークは3月を最後に中止になりました。以下の写真は、昨年1月から3月のギャラリートークの様子です。 

 早くコロナが収まって、またギャラリートークが再開できるようになることを祈っています。

「はるかなる手紙」展 再開のお知らせ

コロナウィルス感染予防のために、2020年4月末から中断していた「はるかなる手紙ー滋賀大学所蔵フランスの貴重自筆書簡」展(御崎加代子監修)が再開することになりました。(ウエッブサイトはこちらです)第2期の展示は、経済学者レオン・セー(Léon Say, 1826 -1896)の1883年付の書簡と関連資料です。10月1日から来年の1月29日まで、展示します。当分の間、ギャラリートークは行いませんが、興味のある方は是非ご覧になってください。

 レオン・セーはフランスの財務大臣を3度つとめ、日本銀行の設立にも大きな影響力を及ぼした人物です。セーが活躍したのは、エッフェル塔など、現在の花の都パリの街並みが出来上がってゆく時代で、印象派の画家たちが活躍した時代でもあります。パリのオペラ座は、このころ流行した「ナポレオン3世様式」と呼ばれる典型的な建築例だとされていますが、今回は、私が以前、リヨンのアンティークショップで購入した「ナポレオン3世様式」のアンティーク銀食器も展示します! 

 

書評 J.M. Keynes vs. F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, by Y. Sakai, 2019

滋賀大学名誉教授の酒井泰弘先生が2019年にSpringer社から出版された単行本についての私の書評 (英文)が『彦根論叢』の2020年夏号に掲載されました。電子ジャーナルで閲覧可能です。

(Book review) Kayoko MISAKI “Yasuhiro Sakai, J.M. Keynes Versus F.H. Knight: Risk, Probability, and Uncertainty, Springer, 2019″ The Hikone Ronso (Shiga University) No. 424 ( Summer 2020) pp. 132-133.

本書は、ケインズとナイトが1921年にそれぞれ発表した不確実性に関する著作の比較考察を軸に、リスクと不確実性に関する思想史を300年以上さかのぼるとともに今後の可能性を示唆しています。経済理論や思想史専門以外の読者にも興味深く読める内容です。

 この本を読んで、経済学において不確実性をどう取り扱うかという問題は、結局、自然科学と経済学の違いにどう対峙するのかという問題に収束していくということを再認識させられました。本書で取り上げられているヒックスの歴史と統計学の関係についての考え方にも感銘を受けました。

「はるかなる手紙」展(第一期 コルソン)解説パンフレット

滋賀大学彦根キャンパスで、2020年1月に始まった企画展「はるかなる手紙―滋賀大学所蔵フランス貴重自筆書簡」(御崎加代子監修)は、コロナの影響で、4月末より休止しています。完了した第1期(2020年1月~4月)の「クレマン・コルソン」の展示については、会場で配布していた解説パンフレットがウエッブで閲覧できます(リンクはこちらです)。興味のある方は、ぜひご覧ください。

第2期「レオン・セー」の展示の準備は整っていますが、いつから開始するかは未定です。コロナが一日も早く収束し、展示とギャラリートークが再開できる日を心待ちにしています。

(「はるかなる手紙展」開催案内ウエッブページのリンクはこちらです

貴重書展示 バスティアの自由放任主義

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2020年春の展示でとりあげるのは、19世紀の前半フランスで活躍した経済学者バスティア(Claude-Frédéric Bastiat, 1801–1850)です。

Frédéric Bastiat (1801-1850)

バスティアは、楽観的な社会的調和論と徹底的な自由貿易の主張により、現代では新自由主義の元祖のひとりとみなされています。アダム・スミスの経済学に影響をうけ、それをフランスに広めた経済学者としても有名です。しかしながらこのような極端な自由放任主義は、アダム・スミスの考え方とは、異なることにも注意をする必要があります。

  貴重書コーナーでは、本学図書館が所蔵する『バスティア全集』(全7巻、1854-1864)と、ルシェ訳『国富論』フランス語版初版(全4巻、1790)を展示します。

 『国富論』は、2011年、2015年、2017年にも展示しましたが、『バスティア全集』は今回が初めての展示です。本学で毎年春学期に開講している「経済学史」は、アダム・スミスの経済学から始めます。この講義を受講する人・受講した人は、ぜひこの展示に足を運んでみてください。

 展示の様子はこちらです。以下が、私の解説文の抜粋です。

 フランスの経済学者バスティア(Claude-Frédéric Bastiat, 1801–1850)は、極端な自由主義と自由貿易を主張したことで知られ、20世紀以降、新自由主義の元祖として言及されるようになった。またバスティアの著作は、明治維新後の日本において、いち早く翻訳され講義された経済学説としても重要である。
 バスティアは、1801年にフランスのバイヨンヌで生まれた。イギリスの穀物法論争に関心をもち、自由貿易運動に共鳴したバスティアは、1846年にボルドーとパリで自由貿易協会を設立し、1848年の2月革命時には、社会主義を批判した。1849年には、立法議会と憲法制定議会の議員に選出されたが、1850年、志半ばで死去した。
 バスティアは、自由放任こそが神の摂理として社会的調和をもたらすと考え、国家の役割に極めて批判的であり、保護主義を痛烈に批判した。主著は『経済的調和論(Harmonies Economiques)』(1850)である。バスティアは、アダム・スミスに影響を受け、その経済学をフランスに広めた一人でもあるが、その極端な自由放任主義は、スミスの考え方とはかなり異なっていることに注意しなければならない。

「はるかなる手紙」展 関連行事ご報告

 滋賀大学彦根キャンパスで開催中の「はるかなる手紙-滋賀大学所蔵フランスの貴重自筆書簡」展の第一期「クレマン・コルソン」の関連行事として、3月2-3日に、東京女子大学の栗田啓子教授を迎えて、講演会とスペシャルギャラリートークを行いました。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。参加できなかった皆さん、大学のHPに当日の様子がアップされましたので、こちらをご覧ください。

2020年3月2日 経済学部講演会「第2世代のエンジニア・エコノミスト-クレマン・コルソンとエミール・シェイソン」 栗田啓子(東京女子大学副学長・教授)

2020年3月3日 ひなまつりスペシャルギャラリートーク(栗田啓子&御崎加代子)

「はるかなる手紙―滋賀大学所蔵フランス貴重自筆書簡」展ご案内

滋賀大学彦根キャンパスでは、企画展「はるかなる手紙―滋賀大学所蔵フランス貴重自筆書簡」(御崎加代子監修)を開催することになりました。

  • 第1期:2020年1月7日(火)~4月30日(木)クレマン・コルソン
  • 第2期:5月7日(木)~8月31日(月)レオン・セー
  • 第3期:9月2日(水)~12月25日(金) フランソワ・ギゾー

展示する3人のフランスの歴史的人物の書簡は、いずれも私が偶然発見し、フランスの専門家の助言を得て解読したものです。このうち、レオン・セーとギゾーの書簡については、このサイトでもご紹介しました。本展示では、書簡の紹介だけでなく、その歴史的背景や舞台となったパリの雰囲気も、関連図書やパネルなどを使ってお伝えしてゆきます。 ギャラリートークも私が担当します。ご関心のある方は、ぜひお越し下さい。 (開催案内ウエッブページはこちらです

貴重書展示 18世紀 英仏の財政危機

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2019年秋の展示は、18世紀にイギリスとフランスで出版された財政赤字をめぐる文献です。 1.ゴードン著『1688年から1751年にわたるイギリスの国債と租税の歴史』(1751-53)、2.ミラボー著『租税の理論』(1760)、3.コクロー著『テレー総監の下における財務行政についての覚書』(1776)の三点を展示しています。

 特に、1のゴードンの著書には、税収等の詳細な統計データが添付されています。18世紀の統計資料がどのようなものだったか、興味のある方は是非ご覧になってください。

以下が私の説明文の抜粋です。

16世紀以来、重商主義政策によって繁栄したヨーロッパの絶対主義国家は、激しい植民地戦争により軍事支出が増大し、深刻な財政赤字に直面することになった。 18世紀の半ばにイギリスで出版された、歴史家ゴードンの著作『1688年から1751年にわたるイギリスの国債と租税の歴史』(1751-53)は、豊富な統計データに基づき、均衡財政の重要性を説く書物である。この本はアダム・スミスの蔵書に含まれ、資金調達のための長期国債の発行を厳しく批判する『国富論』の財政理論に影響を与えた可能性も指摘されている。 フランスの財政状態はイギリスよりもさらに深刻であった。ミラボー(Mirabeau, V. R.,le marquis de, 1715-1789)の『租税の理論』(1760)は、重農学派の最初の体系的書物であり、同学派の「土地単一税」の構想(当時の複雑な税制をすべて廃止し、土地のみに課税するという考え方)が示されている。 ルイ15世の統治下最後の財務総監をつとめたテレー(Terray, L’abbé Joseph Marie, 1715-1778)も、在任中の1769年から1774年より様々な租税改革を実施し、国庫収入の増加に貢献したが、根本的な解決にはならなかった。重農学派に影響を受けたチュルゴはテレーの後、財務総監に就任するが、1776年失脚。結局、フランスは財政の立て直しに失敗し、革命への道をたどる。

展示の様子は図書館のこちらのページをごらんください。

次回の展示替えは来年の3月を予定しています

貴重書展示 ロックとモンテスキュー

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2019年春の展示は、ジョン・ロック『著作集』(第6版 1759)と モンテスキュー『法の精神』(アメリカ版初版1802)です。二人の名は、新入生の皆さんにもおなじみでしょう。ぜひ足を運んで、貴重書の迫力を感じてみてください。

ロックの『著作集』は2014年春にも展示しましたが、モンテスキュー『法の精神』の展示は今回が初めてです。19世紀初頭にアメリカで公刊されたものですが、同時代に活躍した下院議員の蔵書だったことがわかりました。

以下、私の解説文の抜粋です。

フランスのボルドー出身のモンテスキュー(Charles-Louis de Secondat, Baron de La Brède et de Montesquieu, 1689-1755)は、1748年に匿名で『法の精神(L’Esprit des lois)』出版した。これは出版後、大反響をよび1750年までに22版を重ねたが、宗教界からは批判をうけ、1751年にはローマ教皇庁の禁書目録に入った。 現代の教科書では、『法の精神』は三権分立を説いた近代政治学の古典として紹介される。しかし本書の意義は、それだけにとどまらない。タイトルが示すように、本書の目的は「法則」・「法」について論じることである。観察を出発点とするモンテスキューの方法は、実証科学としての社会科学の誕生を意味しており、本書はそういう意味においても、近代の幕開けを告げる革命的な書物なのである。 本図書館は、1802年に公刊された『法の精神』のアメリカ版初版を所蔵している。これは、アメリカのサウス・カロライナ州選出の下院議員Eldred Simkins(1779-1831)が、在任中の1820年に購入したものと思われる。 今回は、モンテスキューと同様、近代政治哲学の礎を築いたジョン・ロック(John Locke,1632-1704)の『著作集』(第6版1759年)を同時に展示する。

 次回の展示替えは9月を予定しています。