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根岸隆教授 講演録「ワルラスの樫の木」をめぐって

今年の春、根岸隆教授から、日本學士院での講演録「ワルラスの樫の木」の抜刷 (日本学士院紀要 第70巻第3号)が届きました。「ワルラスの樫の木」とは、レオン・ワルラスが友人あてに書いた手紙の中で述べた、ある有名な文章を指しています。一般均衡理論の創設者として名高いワルラスですが、存命中はなかなか思うように評価されず、苛立っていたのです。

「ひとは自分の行ったことに明確な認識を持たなくてはならない。もし収穫を急ぐならば、ニンジンやサラダ菜を植えるべきである。しかしもし樫の木を植えるだけの野心があるならば、自分自身にこう言い聞かせるべきであろう。わたくしの孫たちはこの緑陰をわたしに追うているのだ、と。」(1903年4月 ワルラスからルイーズ・ルナールへの手紙)

この「樫の木」の文章について、根岸教授から最初に問い合わせがあったのは、もう18年近く前になると記憶しています。根岸教授はこの講演録で、私とのやり取りも含めて「樫の木」をめぐるいきさつについて説明されています。

「樫の木」の文章が含まれたワルラスの書簡は、1965年にジャッフェが公刊した『ワルラス書簡集』(1965)に収められています。

根岸教授が注目されたのは、安井琢磨教授(1909-1995)が、ジャッフェの書簡集の出版よりも早い1957年に『経済セミナー』の学生向けの記事で、引用元を明らかにせず、この文章を紹介しているという事実です。いったい安井教授はどこからこの文章を引用したのでしょうか?

根岸教授が示されたこの謎を解こうと、私もいろいろと調べてみましたが、どうしてもわかりませんでした。そこで今年の夏、この分野の大御所ともいえるフランス人研究者にも相談してみたのですが、ついに決定的な答えは得られなかったのです。

追記:根岸教授の「ワルラスと樫の木」講演録は、ウエッブでもアクセス可能です。日本学士院ニュースレターのN.17(2016年4月号)(14-15頁)