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貴重書展示 ロックとモンテスキュー

 滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2019年春の展示は、ジョン・ロック『著作集』(第6版 1759)と モンテスキュー『法の精神』(アメリカ版初版1802)です。二人の名は、新入生の皆さんにもおなじみでしょう。ぜひ足を運んで、貴重書の迫力を感じてみてください。

ロックの『著作集』は2014年春にも展示しましたが、モンテスキュー『法の精神』の展示は今回が初めてです。19世紀初頭にアメリカで公刊されたものですが、同時代に活躍した下院議員の蔵書だったことがわかりました。

以下、私の解説文の抜粋です。

フランスのボルドー出身のモンテスキュー(Charles-Louis de Secondat, Baron de La Brède et de Montesquieu, 1689-1755)は、1748年に匿名で『法の精神(L’Esprit des lois)』出版した。これは出版後、大反響をよび1750年までに22版を重ねたが、宗教界からは批判をうけ、1751年にはローマ教皇庁の禁書目録に入った。 現代の教科書では、『法の精神』は三権分立を説いた近代政治学の古典として紹介される。しかし本書の意義は、それだけにとどまらない。タイトルが示すように、本書の目的は「法則」・「法」について論じることである。観察を出発点とするモンテスキューの方法は、実証科学としての社会科学の誕生を意味しており、本書はそういう意味においても、近代の幕開けを告げる革命的な書物なのである。 本図書館は、1802年に公刊された『法の精神』のアメリカ版初版を所蔵している。これは、アメリカのサウス・カロライナ州選出の下院議員Eldred Simkins(1779-1831)が、在任中の1820年に購入したものと思われる。 今回は、モンテスキューと同様、近代政治哲学の礎を築いたジョン・ロック(John Locke,1632-1704)の『著作集』(第6版1759年)を同時に展示する。

 次回の展示替えは9月を予定しています。

 

新講義 History of Economic Ideas and Globalization

2018年10月より、滋賀大学経済学部で新科目 History of Economic Ideas and Globalizationを開講することになりました。英語による少人数講義です。現代のグローバル経済を理解するうえで重要な鍵となる経済学の概念がどのような歴史的背景のもと誕生したのか考察します。留学生の履修を想定して、日本の近代化の歴史についても触れます。以下が講義の計画です。

1.Introduction 序論
2.Invisible Hand 1 見えざる手1
3.Invisible Hand 2 見えざる手2
4.Laissez-Faire and Free Trade レッセ・フェールと自由貿易
5.Poverty 貧困
6.Industry インダストリィ
7.Comparative Advantage 比較優位
8.Utilitarianism 功利主義
9.Perfect Competition 完全競争
10.Entrepreneurship 企業者
11.Risk and Uncertainty リスクと不確実性
12.Economic Ideas and Japanese Modernization 日本の近代化と経済思想
13.Presentation レポート発表
14.Presentation レポート発表
15.Free discussion 自由討論

すでに経済学部では、日本語による専門科目「経済学史」「現代経済学史Ⅰ」「現代経済学史Ⅱ」を開講していますが、これら3科目が学者別、学派別にそれぞれの学説の意義を取り上げるのに対して、この英語講義は、概念別にその歴史的背景をとりあげ、歴史の予備知識があまりなくても容易に理解できるように配慮しています。ちなみにこの講義では、以下のような経済学者たちが登場します。

貴重書展示 近代統計の父ケトレ『人間論』『社会体制論』・プゥシェ『フランス統計論』

滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2018年春の展示は、統計学の古典3点です。

近代統計の父とされるケトレ(Quételet)の主著『人間論』の1869年増補版(Physique sociale, ou, Essai sur le développement des facultés de l’homme, 2 vols, Bruxelles : C. Muquardt, 1869)、同著『社会体制論』(Du système social et des lois qui le régissent, Paris : Guillaumin, 1848)、プウシェ(Peuchet)『フランス統計論』1801年初版( Essai d’une statistique générale de la France, Paris : Chez Testu, [1801])を展示しています。データサイエンス学部の新入生の皆さんに特に注目してほしい展示です。

 

以下、私の解説文の抜粋です。

 ケトレ(Lambert Adolphe Jacques Quetelet, 1796-1874)は、19世紀のベルギーで活躍した数学者、天文学者、統計学者、社会学者である。1835年に出版した主著『人間について(Sur l’homme et le développement de ses facultés, ou essai de physique sociale)』は、統計学と確率論を道徳科学に適用したことで後世に大きな影響を与えた。彼は、ベルギーとオランダの政府のために、犯罪や死亡などに関する統計を収集・分析し、国勢調査の改善を考案した。社会現象にも物理現象と同様に統計的法則性が存在するというケトレの考えによって、人間の自由意志はどのように位置づけうるのかという問題に関して、社会科学者たちの間で大論争が起こった。今回展示するのは、本図書館が所蔵するケトレの著作のうち『人間論』の増補版(1869)と、『社会体制論』(1848)である。この1869年の増補版は、『人間論』初版と、タイトルの語順が入れ替わっている。

 また革命後のフランスで、国勢調査の重要性を主張した、ジャック・プゥシェ(Jacques Peuchet, 1758-1830)の『フランス統計論』(初版1801年)も同時に展示する。この小論は同時に商業事典にも収録されたが、この冊子体そのものは印刷部数が限られ、当時の政府官僚にのみ行き渡った非常に珍しいものであるとされている。

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ジャック・プゥシェ『フランス統計論』(1801)

展示の様子はこちらです。次回の展示替えは、9月を予定しています。

貴重書展示 コンドルセ『人間精神の進歩に関する歴史的展望の素描』(1795)

滋賀大学付属図書館の貴重図書コーナーの展示替えをしました。2017年春の展示は、コンドルセの遺作『人間精神の進歩に関する歴史的展望の素描』(Esquisse d’un Tableau Historique des Progrès de l’Esprit Humain. S.I., s.n., 1795)です。

 コンドルセが支援したとされる、ルーシェによるアダム・スミス『国富論』の仏語訳 (Recherches sur la nature et les causes de la richesse des nations, traduites de l’anglois de M. Smith, sur la quatrième édition, par M. Roucher. Paris: Chez Buisson, 1790-1791)も同時に展示しています。

以下は、私の解説文の抜粋です。

コンドルセ(Condorcet, Marie-Jean-Antoine Nicolas de Caritat, 1743-1794) は18世紀のフランスで活躍した啓蒙思想家である。その業績は多岐にわたり、数学者(特に確率論)、黒人奴隷の解放論の先駆者、チュルゴの経済改革の協力者、近代的な公教育制度の立案者などとしても知られる。
 今回展示するのは、コンドルセの遺稿となった『人間精神の進歩に関する歴史的展望の素描』である。コンドルセは、この中で、理性、科学、技術、社会、人間の無限進歩を確信しており、本書は、啓蒙思想の最後を代表する著作として、後世に影響を与えた。
  マルサスが『人口論』(1798)で、このコンドルセの進歩論に真っ向から反論する形で、議論を展開していることはよく知られている。

滋賀大学経済学部の2017年春学期の講義では、私の担当する「経済学史」でアダム・スミスとマルサスをとりあげます。受講する皆さんはぜひこの貴重書コーナーにも注目してください。

なお本展示に関する図書館のウエッブページはこちらです。次回の展示替えは9月を予定しています。