滋賀大学附属図書館の貴重書コーナーの展示替えを行いました。2021年秋の展示は、「現代経済学の誕生」というテーマで、ジェヴォンズ、ワルラス、マーシャル、パレートの著作を展示しています。
滋賀大生の皆さんは「現代経済学基礎」等の授業で、彼らが生み出した経済学の概念について、学んでいます。また秋学期に私が開講する「現代経済学史Ⅰ」の授業でも、これらの経済学者たちが登場します。履修をする人は、ぜひ貴重書コーナーに足を運んでみてください。
私の解説文の抜粋はこちらです。
1871年、イギリスのジェヴォンズ(William Stanley Jevons, 1835-1882)が、『経済学の理論』の初版を出版し、限界効用理論を世に知らしめ、古典派の時代にピリオドをうった。スイスのフランス人ワルラス(Léon Walras, 1834-1910)は、限界効用理論の発表については、ジェヴォンズに先を越されたが、そこからさらに進んで一般均衡理論を完成させ、主著『純粋経済学要論』 (初版1874‐77年)を公刊した。この著書は、ワルラスの存命中、第4版(1900年)まで版を重ね、各国に普及していった。ワルラスの一般均衡理論は、すべての経済主体、すべての市場における均衡とその相互依存関係を連立方程式で表現したものであるが、これによって、現代経済理論の基礎が築かれた。 イギリスのマーシャル(Alfred Marshall, 1842⁻1924)の主著『経済学原理』(初版1890年)は、1920年の第8版まで版を重ね、彼が教授を務めたケンブリッジ大学は、世界の経済学の中心となった。マーシャルは、「消費者余剰」、「外部経済」など、現代経済学の重要な基礎概念を確立し、マーシャルの分析方法は、ワルラスの一般均衡分析に対し、部分均衡分析と呼ばれる。 一方、ローザンヌでのワルラスの後継者パレート(Vilfredo Pareto,1848-1923)は、ワルラス一般均衡理論から出発しつつ、「パレート最適」という厚生経済学の重要定理を確立した(主著『経済学提要』、初版1906年)。
図書館の展示の様子はこちらです。
次回の展示替えは、2022年3月を予定しています。