滋賀大学附属図書館の貴重書展示コーナーの展示替えを行いました。2020年春の展示でとりあげるのは、19世紀の前半フランスで活躍した経済学者バスティア(Claude-Frédéric Bastiat, 1801–1850)です。
バスティアは、楽観的な社会的調和論と徹底的な自由貿易の主張により、現代では新自由主義の元祖のひとりとみなされています。アダム・スミスの経済学に影響をうけ、それをフランスに広めた経済学者としても有名です。しかしながらこのような極端な自由放任主義は、アダム・スミスの考え方とは、異なることにも注意をする必要があります。
貴重書コーナーでは、本学図書館が所蔵する『バスティア全集』(全7巻、1854-1864)と、ルシェ訳『国富論』フランス語版初版(全4巻、1790)を展示します。
『国富論』は、2011年、2015年、2017年にも展示しましたが、『バスティア全集』は今回が初めての展示です。本学で毎年春学期に開講している「経済学史」は、アダム・スミスの経済学から始めます。この講義を受講する人・受講した人は、ぜひこの展示に足を運んでみてください。
展示の様子はこちらです。以下が、私の解説文の抜粋です。
フランスの経済学者バスティア(Claude-Frédéric Bastiat, 1801–1850)は、極端な自由主義と自由貿易を主張したことで知られ、20世紀以降、新自由主義の元祖として言及されるようになった。またバスティアの著作は、明治維新後の日本において、いち早く翻訳され講義された経済学説としても重要である。
バスティアは、1801年にフランスのバイヨンヌで生まれた。イギリスの穀物法論争に関心をもち、自由貿易運動に共鳴したバスティアは、1846年にボルドーとパリで自由貿易協会を設立し、1848年の2月革命時には、社会主義を批判した。1849年には、立法議会と憲法制定議会の議員に選出されたが、1850年、志半ばで死去した。
バスティアは、自由放任こそが神の摂理として社会的調和をもたらすと考え、国家の役割に極めて批判的であり、保護主義を痛烈に批判した。主著は『経済的調和論(Harmonies Economiques)』(1850)である。バスティアは、アダム・スミスに影響を受け、その経済学をフランスに広めた一人でもあるが、その極端な自由放任主義は、スミスの考え方とはかなり異なっていることに注意しなければならない。