Month: June 2017

資料紹介 Léon SayからAlfred de Fovilleへの書簡(1883)

『彦根論叢』(滋賀大学経済学会)の最新号(2017年夏号 412号)に、私の資料紹介論文「滋賀大学図書館蔵 Léon Sayから Alfred de Foville への書簡(1883)」が掲載されました。(オンラインジャーナルはこちら

lettre de Leon Say a Foville_ページ_3

著者 Léon Say から de Foville に献呈された『フランスの財政』(1883)

Léon Say (1826-1896)は、フランスの有名な自由主義経済学者で、フランスの財務大臣を3回務めました。明治時代初頭、日本銀行の設立にも大いに影響を与えた人物として知られています。

Léon Say 著の『フランスの財政』(1883)を数年前に科研費で購入したところ、その本には Léon Sayの自筆書簡が添えられていました。しかしそれが誰宛てなのかがどうしても解読できませんでした。今年の1月に、リヨン第2大学のJean-Pierre Potier教授に会ったときにこの書簡のことを相談したところ、著名な統計学者 de Foville宛のものだということがわかったのです。そしてその書簡の内容から、この本は Léon Sayから de Fovilleに献呈したものであることが明らかになりました。つまりこの本は、de Foville の蔵書だったのです。このことをツイッターで発信したところ、de Fovilleの子孫であるパリ在住の若者からメッセージが届くという、興味深いハプニングもありました。

English Lunch Seminarで報告しました

32017年6月15日、滋賀大学リスク研究センターのEnglish Lunch Seminarで発表をしました。 先月、ESHET2017アントワープ大会で報告した論文 “Léon Walras on The Wealth of Nations— What did he learn from Adam Smith?”の内容を要約して報告しました。多数の方々に参加していただき、また貴重なコメントをいただき、どうもありがとうございました。

ワルラスとイスナール

ESHET2017アントワープ大会で初めて会った研究者のひとりに、Richard van den Berg教授がいますvan den Berg教授は2006年にフランスの数理経済学者イスナール (1748-1803)についての研究書を公刊し、私は2007年にその書評を日本語で発表しました。「(書評) Richard van den Berg: At the Origins of Mathematical Economics: The Economics of A.N. Isnard (1748-1803), Routledge, 2006」『経済学史研究』49-1 (June, 2007)pp.192-193.

またこの著作に大いに刺激を受けて、私自身、ワルラスとイスナールとの関係についての研究に取り組みました。通説によれば、イスナールはワルラス一般均衡理論の先駆者であるということになっていますが、研究を進めるうちに問題はそれほど単純ではないことが分かってきました。通説を真っ向から批判する私の解釈は、  2009年の9月にローザンヌ大学ワルラス=パレート研究所で実施したセミナー“Walras and Isnard: Continuity and Discontinuity in the History of Economic Thought”で報告しました。しかしながらこの研究成果は、色々な事情で英語での公刊に至らず、日本語論文としてまとめたものを大学の紀要で発表するにとどまりました。「ワルラスとイスナール‐経済学史における連続と断絶」『滋賀大学経済学部研究年報』16, 2009, pp.101-112.

イスナール富論1781

ローザンヌ大学ワルラス文庫所蔵 イスナール『富論』1781

ESHET2017で初めてお会いするまで、van den Berg教授とは一度もコンタクトをとったことがなかったのですが、今回、これまでのいきさつをすべて伝えることができました。また、日本語でしか公刊できなかった私のイスナール研究の成果は、最近、意外な形で日の目を見ることになりました。ローザンヌ大学ワルラス=パレート研究所の定期公刊物に掲載された私の2009年のセミナーの報告要旨が、2016年に公刊された経済学史の教科書(3巻本)の「一般均衡理論」の章において、Alain Kirman教授によって、van den Berg教授の研究とともに引用されているのです。Gilbert Faccarello,Heinz D. Kurz (eds.) Handbook on the History of Economic Analysis, Volume III, Developments in Major Fields of Economics, Edward Elgar Publishing. 2016

これはたいへんうれしかったです。フランスの18世紀の経済思想史はたいへん奥深く、未解明の部分も多く残されているので、今後もじっくりと取り組んで行きたいと思っています。